kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

去人たち月例生配信 2018年02月23日 21:00 ~

久しぶりに去人たちの生配信をします。
Youtube Live とニコニコ生放送の両方で同時配信予定です。

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同人ゲームサークル運営で学ぶ「ふりかえり」

生配信予定日時: 2018年02月23日(金曜日) 21:00 ~ (1時間程度)
登壇者: kow@suhito だけ!
Yotube: 去人たち - KYOJINTACHI - YouTube
ニコ生: 美の去人たち-ニコニコミュニティ

配信についての経緯とか補足とかもろもろ

で去人たちプロジェクトを再起動させるのじゃ! と意気込んで、
「去人たち Reboot Camp #001」
とやらか勝手に一人で主催して、勝手に一人で人里離れたところで合宿みたいなことをしてきました。
別途、記事にしてあります。

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――準備編 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――1日目 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――2日目 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――3日目最終日 - 去人たち開発ブログ


去年の夏頃、心身疲労がひどい状態で
「もう、去人たちなんて作ってられっか! やめてやるやめてやる絶対にやめてやるやめてやる絶対にやめてやるこんどこそ絶対やめてやる……」
みたいになってました。
半分正気失ってたんで
「去人たちをやめますか? 人生やめますか?」
なとど頭の中で勝手に二者択一を迫ってた訳です。
去人たちやめないってことは、人生やめたことと実質かわらなんじゃねーかよ、この間抜けめ、という気づいて人生放り出してロスサントスに行っていたんですが、ロスサントスはロスサントスでクソ野郎しかないという点ですがすがしいんだけどクソ故に美しすぎるという歪んだ世界に辟易して向こうの生活を捨ててまた戻ってきた、という訳なんです。
まあ、よくある話なんですけどね;;

人生やめてみたけどだめで、目の前にあるのは「去人たち」だけだったんでどうしようかなと思ったんですが「やる前提で前向きに検討しよか」ということになりました。
ただ、自分の思考がめちゃくちゃなままだったので、気分転換も含めて静かな場所にこもりたいなと。
それが、「去人たち Reboot Camp #001」です。

去人たちプロジェクトをやめたいっていうより、まともにつくれない自分の能力とか周辺の様々な環境とか、いろいろ嫌になっていたというところが大きかったと思っています。
時間が経過していくたびに自分が消えていって何もなくなる気がして、主体としての生き残り戦略を慌てて立てた。ゴミみたいな自己顕示欲の塊になった私は去人たちをそれのはけ口にしようとしていたのだと思います。去人たちをレイプつもりで事に臨んでも、相当な勇者じゃなきゃ達成できないっていうのは分かってたみたいで、すっかりしゅんとなって萎縮してたんですね。象徴としてのファルスの話じゃなくてね。

話があさっての方向に行きそうなので修正。今回の配信の補足です。
前にスクラム開発についてまとめました。そのなかのふりかえり(レトロスペクティヴ)を去人たちのチーム運営に適用してみたよっていう話になります。

k2cee.hatenablog.com

スクラム開発の経験はありますが、スクラムマスターでもないし、うまく使いこなせた経験もないので「試行錯誤してみたよ!」とか「こうやったらうまくいくんじゃね?」的なゆるい発表になります!
ダメ出し、ツッコミも大歓迎です!


Twitter のほうもよろしくお願いします~

【去人たちRebootCamp#001】 決めたこと

前述の通り、キャンプに行ってきた。

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――準備編 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――1日目 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――2日目 - 去人たち開発ブログ
【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――3日目最終日 - 去人たち開発ブログ

日常を離れ、雑念を捨て、自分と向き合うことができればと思っていたけど思い通りにはならない。
でも、それでも良しとする。苦行を押しつけられてそれをクリアすることがいい作品を作る条件なら、そんな作品作らなくていいやと思うんです。

去人たちRebootCamp#001 で決めたこと

アクション 解決したい課題
去人たちZEROのシナリオを小説に書き起こす ・シナリオや世界観などの説明が実物があるので具体的にイメージしやすい
・メンバー募集のとき具体的なイメージを持ってもらいやすい
去人たち or K2Cee のメンバーを増やす ・多様な価値観の中で創作意欲を刺激する
・kow@suhito のやることを減らす
・制作の速度を上げる
・創作を楽しむ
プロジェクトをに余裕をもたせたスケジュールを立てる ・継続的なインプットが創作には必要
・忙しすぎるとプロジェクトが息切れする
・これまでもスケジュール通りにならなかった
・納期に追われてやらされてる感だけになってしまう
1つのリリースボリュームを小さくして四半期(仮)ごとになんらかリリースできるようにする ・長大な作品をつくってリリースすると不安になる
・方向転換がきかなくなる
・先が見えなくて心が折れる
・リリースによる継続的な達成感
・アウトプットによる定期的なフィードバック
・アイディアの消費期限切れが早い
企画段階、開発段階において新しい技術へのトライを推奨する ・メンバーの向上意欲を支援する
・娯楽としての創作を続けていきたい
情報をもっとオープンにしてメンバーに共有する ・kow@suhitoが思いつきで作業をする
・メンバーがただの作業者になってしまう
音声MTGSkype等) を積極的に活用する ・効率よく意思疎通ができて作業時間を圧迫しない
・よりコミュニケーションが近いので信頼関係を強くできる
進捗管理や情報共有のツールを活用する ・物理的な創作空間がないので非同期コミュニケーションで認識のずれを減らす
SNS を定期的に更新する ・ファンを増やしてもっと「去人たち」をしってもらう
・去人たちのダウンロード数を増したい

たくさんのアクション候補がでてきたのですが、あたしにとって効果が高いと感じたもの、やってみたいと感じたものをピックアップしました。本当はもうちょっとアクションを絞りたかったんですが。
一番大きい課題は「しんどさ」をどうなくすか、という点です。趣味でつくってんのに「しんどい」ってどういうことかと思うでしょうが、あたし自身も全くその通りだと思ったんです。何かを成し遂げるためには「しんどさ」は必ずつきものなのだ、という思い込み自体があるんだろうと気づきました。今回の Reboot Camp もまさにそうで、静かで雑念のないところで作業で集中して作業をしたいという目標なら、自転車なんてつかわなくていいし合理的な交通手段でいけばいいんですよ。開発していると少なからずしんどい局面がでてくるけど、ベースがしんどくてひたらすらしんどいんじゃあ、継続的に作り続けることなんてできない。
しんどさの原因の1つに去人たちのボリュームがでかすぎる問題があるので、細かい単位でリリースできるようにしようと思います。それを実現するための仕組みはどうするんだ、という点については何もアイディアがない状態ですが。リリースを早くすることで、開発側としてははやめに方向性の確認ができることと、ユーザのフィードバックを得られるという点は不安感を募らせながら何年も作るよりも良くなるだろうと。一方で、ため込んで練り込んでいくことで出てきている「去人たちらしさ」のようなものあるのではないかと考えましたが、実際やってみたあとでどうなったかを見てみようと思います。

K2Cee なり、去人たちプロジェクトのメンバー募集についてはこれから詰めていきたいです。K2Cee は純粋に創作を楽しみたいんだ、という人でないと難しいと思います。果たしてそういう方がどのぐらいいるかと考えてしまいます。純粋に創作をするんだ、となっても数ある同人サークルの中から、売上もありネームバーリューもあり……という順に探していったときに去人たちは何かささるところあるかな、というのは正直なところです。うーむ。自信を持って言えるのは、抜きに出て気が狂っているというぐらいかな。
どのようにメンバー募集を進めて行くかの具体的な話はもうちょっと先になるかなと思います。

去人たちプロジェクト、少しずつですがまた歩き出しました。

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――3日目最終日

 最終日。成果が求められる日だ。旅を堪能して、申し訳程度の去人たち要素が罪悪感を抱く。もうね、この程度のことで罪悪感抱くとかなんだよと思うんだけど、自分ルールって本当に邪魔だ。誰に迷惑かけてるわけでもないのに、思い描いたイメージに付けづけないとイライラし始める。ものづくりでは良いのかもしれないけど、理性にコントロールされない我の部分ってもうね、手に余るんだよ。
 などと、ぼやいていても仕方ない。去人たちの振り返りをしていて意識が内向しているんだろうなあ。

 日がのぼってくると活動開始。洗濯、掃除、薪割り。氷点下の寒さでもきちんと着込んで少し動けばちょうどいい。風がほとんどなかったことに助けられたかもしれない。

 今日は朝からきちんと作業しよう。ひなたぼっこしながら作業開始する。
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 1時間ほど集中して作業する。雑念が入り込むことが多い環境と自分自身の精神状態が散漫な状態が続いていたので、久しぶりに集中したという感覚が新鮮だった。
 少し幸せな気持ちになって、作業の手をとめる。湯を沸かして紅茶を飲む。景色をぼんやりみている。壁を見ながら、象徴的なところにキャンプにきてしまったな、とか、進撃の巨人ってどうなったんだろうなとか自由に連想する。ここ数年、この短く断片的な連想が頻繁になって一貫して深い思考を阻害していた。昔もあったのかな。ただ、集中できただけなのかな。多種多様な情報に触れすぎて、どれも同じぐらいに興味を失ってしまったせいかな。昔は一つのことに強い興味があったからかな。
 昔はよかったのかな、本当に?

 そんな風にしりとり連想法的にシナプスを活動させていると時間があっという間に過ぎる。
 いったん、頭からっぽにしよう。すぐそこに坂があるって本当に良い環境だなあと思う。山道は信号もないし、ペダル回した後はいつもと違う景色がある。

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 つかの間のサイクリングを楽しんだ後はキャンプ地に戻って作業をする。頭の中の腐ったキャッシュはクリアされている。
 どうして、去人たちをつくっているんだろうな、去人たちをつくっていてよかったこと、悪かったこと、どうしてよかったのか、どうして悪かったかを延々と考え、ときにはイマジナリーフレンドと議論しながら。

 総括すれば、振り返りでいろいろな洞察は生まれたけど、今回の Reboot Camp では大きな宿題が残った。
 どうして、去人たちをつくっているのか。
 いやだったり、しんどかったりするんだったら作らなければよい。迷惑をかける? ファンが何千人、何万人いるわけでもなし、もちろん頭を下げないといけないといけないこともあるけど、言ってしまえばその程度のことだ。

 どうして、去人たちをつくっているのか。

 という問いは、メンバーにもうまく説明できていない気がする。そのときは面白そうだから、とはいえるけど、そこから先を深掘りするのは少し危険な気がしていた。Reboot Camp でこの問題にたどり着くのはどこかで分かっていたのだろうけど、ずっと後回しにしてきたことでもう回避できないところまで来たんだと覚悟するしかった。面白そうだから作っているんだというもっともらしい理由は今は使えない。面白くもないのにまだ作ろうとしているのを認めないと。やめるにしても、方向転換するにしても、自分が何をしようとしているかを知る必要はあるんだろう。こういうときに、イマジナリーフレンドは役に立たない。イマジナリーフレンドは主体を持たないのかも。

 これが小説なら、太陽がまぶしいという理由で象徴的な壁を爆破して村を一つ崩壊させたテロリストは幸せなキスをして物語は終わるんだけど、残念! これは終わらない夢なんだよね。
 寒さに震えながら焚き火をする。あたりは静まりかえり、虫の音すらしない。薪がしゅうしゅう言いながら炎をあげる。見上げると星空がクリアに広がる。いろんなものとの距離感が曖昧になっている。でも、これならもう少し歩けるかもと思ったりした。

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――2日目

 二日目。エアコンでぬくまった部屋で起きる。毛布一枚だったのでちょっと寒い。トイレに行こうとドアから外に出る。冷たい。冷たいが思ったほどでもない。昨日なんだかんだで、ビールとホットウィスキーを飲んで少し酒が残っていて身体がほてっている気がする。
 湯を沸かし、前日に仕入れていた朝飯のカップラとパンを食べる。フリースをきてもこもこしながらアウターを着込むと寒さを感じない。
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 食べながら今日の予定を考える。指先が冷たい。不思議なのはこの状況でカップラを食べているのに周囲の景色はぼんやりしている。眠気や疲労はない。ありふれた空間でありふれたことをしているような感覚が残っている。なんで、自分で興ざめしているのかなと思いながら朝食を食べ終わる。
 キャンプ場の売店で洗濯用の洗剤二つと薪を二つ買う。疲労から回復しコミュニケーション魔法の MP は全快していた。いくつかの魔法を繰り出してなごやかに会話する。自転車の話を少し、施設の話を少し。宿泊施設はバンガローを申し込んだけど、超絶グレードアップしてオートロッジになっている。

昨日のぼく「え!! 同じ値段でオートロッジでを!!」

 まあ、当然の反応ですよね。2500円の格安プランでとまってるのにいいんだろうか。自転車の人は温泉から遠いと湯冷めしてしまうこということで、バンガローではなくて近場のオートロッジにしてくれているそう。冬季だから空いているてるからできるんだろう。あと、ほかに1,2組オートロッジを利用する方がおられたので「共同施設」の掃除なども含めて効率がよいというのもあったんだと思う。バンガローは誰も宿泊していないので、炊事場、トイレを使用可にするだけでもかなり手間でしょうし。

 薪を持って帰り割る。ナイフで薪を割る。バトニング。

モーラ・ナイフ Mora knife Companion MG (ステンレス)

モーラ・ナイフ Mora knife Companion MG (ステンレス)

 薪は焚き付けがあればなんとかなる程度にすでに割ってある。細めの薪を数本確保しておけば問題なさそう。でもバトニング楽しくて割りすぎる問題が発生。投入量で火力調節しやすいのでまあよしとするか。
 モーラ・ナイフでのバトニングは初めての楽ちん。薪に節があると。そこの部分がやっかいですが、そこを回避するように刃をいれると割りやすいです。杉の木の薪だったのでそれ以外だと々なのかは試してないです。フェザースティックは練習してみましたがあれは練習が必要。どうせ、バーナーとマツボックリで点火する予定なのでいらないんですけどね。

 さて、焚き火の準備もすんだし散歩にでかけよう。

 ダム。キャンプ場はダムの壁の横にあって威圧感があります。
 キャンプ場内からみるとこんなんですが
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 これを上からみるとこんなん。

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 さらにダムから身を乗り出して下をのぞくとこんなん。手汗ががとまらない。あ、あい きゃん、 ふ、ふ……ふら…………

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 そんな感じで巨大建造物に少しだけテンションあがり少しだけ生気を取り戻す。しかし破壊されたら生き残る確率皆無なところにいるんだな。いや、まあ、いいんだけどさ。
 ダム散歩から続けて、遊歩道を散歩。冬季なので誰もとおらないんだろう。ちょいちょい倒木が行く手を阻む。

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 景色は美しいと思うし、風の音、鳥の声もすべて良い。そして自分はたった一人でここで崖から落ちたら当分気づかれないだろう。状況はすべて楽しいのに、なんでこんなにぼんやりしてるのかな。色が戻ってこない。

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 散歩から帰ると13時すぎ。少しだけ、去人たちの振り返りをやる。(申し訳程度の去人たち Reboot Camp 要素なんなんだよ……)
 15時になり晩飯のBBQの買い出し。ネギは幸せな生活感のシンボルだと感じるよ、つくづく。

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 ふやけるほど温泉につかり、焚き火とBBQを開始する。日は傾き初めて、日没はすぐそこ。一気に寒さが増してくる。
 寒冷地用のガスじゃないので 火力が弱い……BBQ が弱火すぎる。グリル用かまどだし、焚き火で焼くか。クッカーが真っ黒になるんだろうな……
 完全に日が没すると、寒さはピーク。いや、ピークは朝方なんだろうけど、フリースだけじゃ限界かも。焚き火にしがみつく。これ、のんびり焚き火でつくろぐとかいう状況じゃねえ。薪をがんがん投入せねば。
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 薪二束が2時間足らずで灰に……

 室内に退却して、改めてホットウィスキーを飲む。ふう、ふぅ。
 明日の天気予報では氷点下7度。あるある、たまに寒い日、あるよね~。

 ホットウィスキーを飲みながら去人たちの作業。(申し訳程度の去人たち Reboot Camp 要素なんなんだよ……)
 悪いと思ってることがたくさんでてきて、気が滅入る。分かっていたけどさ。なんだよ、このキャンプの目的は認知療法的解決なのかよ。一人でブツブツ言いながら作業をしているとウィスキーが進みすぎてまどろんでくる。
 静か……。いや、静か……じゃない。サルがまわりできぃきぃいいながら縄張り抗争でもしているのだろうか。

 その日の夜、みんなで飲みに行って一人だけ置いてけぼりにされる夢をみる。起きた後にはっとなって、ちょっとだけうれしかった。

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――1日目

 前置きが長くなりました1日目がはじまります。移動日ですがリザルトは下記の画像をご覧ください。いろいろありますが、ごちゃごちゃ言わず、日誌を書いてきましょうね。

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 満充電の電池類、モバイル類、選択された冬季用ウェアをリュックに詰める。今回はロッジ宿泊なので自転車用リュック(18リットル)にしようとしたが、どうにも収まらない。収納力! ランタンを捨て、デジイチを捨てる。水筒も捨てる。ウェアがかさばりすぎる。いくら寒いといっても自転車に乗っているときは、ある程度のウェアになる。着込んで汗だくになるとアウトまで水没して暖をとる方法が一切なくなりひどい目にあう。(実際ひどい目にあっている……)冬でも速乾性の素材とウィンドブレーカーぐらいでうまく調整しながら汗冷えを防ぐ。だから、現地に着いた後の運動量の少ない状態で着るウェアはバッグに詰めることになる。このフリースふかふかできもちいなり……もちろん、自転車に乗っているときに着ることはできないのでバッグにいれないといけないがかさばるったらない。結局、ソロキャンプ用のザックを引っ張り出して詰め込む。その重量、11キロ。

 お、おい冗談だろ……テントもシュラフもソロキャンプ用お肉焼き焼きうまうま石焼きBBQセットもないのに。電池類、バッテリー類、ノートPCが重量とってんだろう。まあ、ヒルクライムも獲得標高ベースでも400メートルぐらいだろうし、いけんだろう、と。
(最大標高300メートルでアップダウンもそんなになさそうだと思っていたが、実際は獲得標高2000メートルになるとはこのときは夢にも思っていない)

 さて電車にのる。平日の通勤ラッシュのなかで弁当を買う。駅弁! 電車と旅において外すことはできない、というのはもちろんだけど今回は時間的にもどうしても社内でお昼を済ませておく必要があった。これは計画段階でも気にしていたのだが、荷物を持った状態でのヒルクライムの時間が読めていなかったのだ。寒さ対策のためにウェアの調整、走り方の調整のために何度か近場でヒルクライムの練習をしたがそこで調整が終わって荷物をもってのヒルクライム練習ができていなかった。ましてや、重量は11キロ。自転車1台背負って走っている状態である。17時の最終チェックインは、トラブルのリスクも含めて余裕だと思っていたが読めなくなった。

 電車で朝飯のサンドイッチを食べ、昼頃に「うに盛弁当」を食べる。加工済みのうにだ。味付けは濃くご飯に合う。うにの風味もほんのりあり、辛すぎることもなく、加工特有の臭みもない。満足、満足。可能であればビールを飲みたいところだ。外を見ると青い空が澄み渡っている。日差しの下では暖かそうなのに。だが、だまされてはいけない。寒波がきているのだ。

 そうしているうちに、駅に到着する。


 気温はもちろん一桁。日差しがあるのが救いだった。日差しを受けた背中はほのかに暖かみを感じる。駅前で自転車を組み立て、防寒装備に身を包む。山賊スタイル。肌が露出している箇所はなく、目だけが外世界と直接接している。

 準備をしていると一緒に電車に降りてきた人が話しかけてきたので、少し談笑する。「山にこもって勉強みたいなことをしたいんです」というとすこし戸惑った感じだ。まあ、そりゃそうだ。勉強するなら環境が整った快適な場所でやればいいのだ。

 もう一人、デジイチを持った観光客と思われる人と会話する。今日はどちらから? どこにいくんですか? 紋切り型のやりとりをして別れる。さて本番だ。



 海沿いの道は多少のアップダウンはあるが快走路が続く。路肩に石つぶてが多めだったが大型車、ダンプがひっきりなしであるが通行する車両の特性によるものだろう。狭路肩では大型車のプレッシャーで心臓バクバクです。出発時は気になっていたザックの重さも許容できそうだった。登りがもたつくがベダルがとまるほどではない。

 快調だった。これならヒルクライムの不安要素を抱えているが計画を前倒しにして貯金を作っている。多少安堵したとき。

 ……ん? ……あ?

 快走路を走っているときに黄色い看板を目にしてやり過ごしたあとUターンして内容を確認した。

「この先のトンネル、歩行者、自転車通行できません」
 
 そう、鬼ヶ城トンネルは軽車両通行禁止!! (ばばーん)


 お、おい……マジかよ。地図をみる。うーむ、迂回するためには山を一つ越える必要がある。ううむ、無理矢理にでも突破しても……そりゃ、まずいか。なんにせよ、違法だし。はあ、はあ、ぜえ、ぜえ。
 国道ではなくて県道で目的に到達するコースになる。標高も未知数。最悪のケースは山中での日暮れヒルクライムをしなきゃならない状況だ。余力、気温、時間、……頭の中で楽観論が優勢だった。ただ、無理はしたくない。ローカル線で輪行するか。「いや、なんとかなる」となんの根拠もなく確信する。山を挟んで併走する国道の最大標高が330メートルなら、県道もそこまで高くないだろう。ましてや貯金もあるのだから。この判断が地獄のはじまりである。
(このときは予想外のできごとに焦っていた。迂回路を見たときに貯金はなくなるだろうと思うとなおさら焦っていた。本当はきちんと迂回路があったのに、時間からくる焦りで間違った判断を早々に下してしまったのだった)

 綺麗な県道の幅員は徐々に狭まり斜度がきつくなる。走行ログをみてみると、平均斜度で7%程度か。荷物を背負った状態では苦行である。時速7キロでゆるゆる上りながら心拍は限界である。アウターを脱ぎさりペダルを回す。ペダルを止まらないようにするだけ精一杯。脳内は現実をキャンセルしはじめて、脳内一人弱虫ペダルをはじめる。坂を登っていると楽しいんだあああああああああああああああああああ。

 山頂ゲットだぜー。444メートル。寒い……

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 山頂を取ると次は険道ダウンヒルである。快走路であれば登った分の支払いを利子付きで返却してもらうところだ。だけど荷物を背負って重心が高くなっている上に、ひどいギャップと隘路と急カーブである。不良債権が焦げ付いてる。でも、できるだけ回収するんだ。命知らずのダウンヒルをやるんだよおおお。でも険道はいう。それ以上はいけない。そうだ、あたしは確かにその声を聞いたんだ。こんなくだらない事で死ねない。そろーりそろーりと下りきる。

 残り20キロ時点で足、腰、肩の余力はほとんどなし。荷物は腰に疲労を蓄積させ違和感の塊を作って、今となっては痛みに変わりつつある。ミニベロのフレームレイアウトと重い荷物は最低の組み合わせだ。快走路を150キロとは全然次元が違う。日が傾きはじめて、気持ちは焦る一方。となれば、あとは気力である。正直、ここで気力はまだ早いんだけどな。ペダルを回していれば、いつかたどり着く。でもこの焦りと気力こそが敵だった。この焦りはペダルのトルク制御を誤らせる。全開で回しちゃうとちょっとした休憩では体力のリカバリが効かなくなる。風が汗を引かせると同時にじわじわ体力を奪っていく。あ、この記述、もう少し先に死んじゃうやつだ。これって死の予感を漂わせてるんだよね。じゃなきゃ、わざわざそんな大げさなこと書かないじゃん。ついに死ぬのか。感慨深いな。

 16時30分。ライブカメラで遊ぶ。死んでたら、ライブカメラに写るわけがない。写っているのだから死んでいない。

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 16時45分、チェックイン。17時定時なんだろう、おばちゃんが慌ただしくいろいろと説明してくれる。口数少なく、無愛想にぼそぼそいっているのは死に損ないだ。おばちゃんは淡々と事務的だがどこか話しづらそうだ。すまんな……。たき火も初日はせずに二日目に。



 ロッジですぐにバーナーで湯を沸かし熱湯をフウフウして飲む。着替える。パラシュートコードを洗濯ロープにしてアウターを乾かす。まだ体の芯から冷えている。

 温泉に入る。運動のとき水分が足りていなかったこともあり、しっかりみずを飲む。でも長湯でこれ以上体に負担をかけると、ビールすら飲めなくなる! ビールだよ!!

 風呂上がり。そっと、ビールを注文。うめええええええええええええええええええええええええええ。この一杯のために、山を登ってきたんだよ!
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1日目に学んだこと。

  • ピンチの時こそ冷静になる必要がある
  • 時間に追い詰められているときに正しい判断を下すのは難しくなる

これプロジェクトにもよく言えることだよね。時間ばかり気にして周りが見えなくなっちゃう。
こうやって振り返ってみると自分があたふたしてるのみて、勉強になる。頼りないけど、しょうがない、人間だもの。