kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

夏コミレポート ― kow@suhito side

長年連れ添ってきた焦げ茶のミッフィーがただのメラニーだったことが判明いたしました。

元来、過激なウサギであるkow@suhito12歳でございます。



焦げ茶のミッフィーがただのメラニーであることはうすうす感じていたのでありますが、わたくしにとってそんなことはそんなことは到底看過することはできないのでございます。

従いまして、これは同人業界を牽引する『システム』が存在しており、まったくけしからんことに彼らが我々を洗脳しようとしているのだということに気付いたわけであります。

<萌え>。まったくけしからん! 彼らは我々の創作意欲をその<萌え>にて征服しようとしておる。<萌え>などという言葉は本当に生ぬるいにもほどがあるのです。同人とは暴走であるべきでございます。もちろん、ゴールは破滅以外のなにものでも御座いません。<萌え>などという同人らしからぬ言葉を捏造した<システム>はここから登録を抹消せねばならないわけでございます。

まあ、わたくしは元来そういう過激なスタイルでございます。


そこで、当然の流れとして、わたくしの信念でありますところの、同人創作は伊達と酔狂であり、玉砕であるのだ、という思いを胸の内に燃えたぎらせ、火の玉となりあの最前戦でありますところの有明に潜入したのであります。

わたくしは、そういった信念をまず装飾として所属を表明するために、ネコミミを装着し全身はその屈強な膨雀高校の女子制服に身を包むことにいたしました。

わたくしは鏡を前にして、自分の姿に唖然としてしまった。

「おいおい、元来ウサミミなのにネコミミをつけるのは、同人業界を転覆させようとするまことにけしからん企てじゃないか」

わたしくは即座に自分の短絡を反省いたしました。わたくしは、何を持って同人とするか、という点を昼夜真剣に検討してまいりました。結論を申しましょう。同人とは一次的なコンストラクションであるのであります。一次的なコンストラクションは剽窃まがいながらも、すべての予断を受け入れることのできる柔軟な創作のことであります。

わたくしはWEBソリューションを展開する工場で働いておりますが、上司に『システム』の犬であるけしからんPMがおりまして、そんなものは軟弱だ、よろめきで、何も発展させないというバカものがおるのです。

何がよろめきで、軟弱か。全共闘をテレビでみていたひよっこが、何を偉そうにいうのか。あるいは、全共闘は終わったと勝手に終戦を向かえているヤツらが何をいうのか。わたくしはまだ、全共闘である。もちろん共に戦うものはいなくなったが、<全部>に対して孤独に闘う<全孤闘評議会総勢一人>である。貴様らのようなわたくしの十倍の収入があるヤツが敵う相手ではないのだ。それでも文句があるならかかってきやがれ!!

と、怒鳴り返してやったわけであります。

わたくしのもくろみは大成功をおさめ、わたくしはまたたく間に『システム』の従僕に囲まれタコ殴りにされたわけで、あります。正直、殴られるのは痛いだけであります。冗談じゃないのであります。

さて、そういった経緯からもわたくしは<同人活動>を盛り上げるべく、そういった自分の惨憺たる姿の修正の余地を感じウサミミとネコミミの選択にとりかかりました。元来ウサミミである以上、ウサミミ以外の選択はないように思われました。しかし、わたくし一つ考えました。かのゴッホゴーギャンに「自画像の耳がおかしい」といわれて自分の耳を切り落としております。この行為に関してのわたくしの見解は後日にするとして、同人として「在るべき耳」は実在しないほうであり、まさに「真に迫る嘘」であるのでございます。「システム」はきっとこの「真に迫る嘘」にしたり顔で近寄ってきて、「やあ、君は大分成長したね!」というのだろうと思いますが、それは勘違いも甚だしい! これは「打倒! システム」の一環であり、「嘘に迫る真」の序章にしかすぎない。おっと、「システム」の連中は超高感度コンクリートマイクを使って、キーボードのタイプの音からわたくしが記述している内容を容易に解読しておるのでこれ以上は不本意ながら自重せざるをえないことを容赦願いたい。

わたくしは耳を切り落とすという愚劣な行為を回避しつつ、圧縮(あるいは隠蔽)された本来的創作を実現することを目論み、ぺたんとウサミミをたたんで、その上にネコミミをのせ家を出たのであります。



2006年8月13日。さわやかな朝でございました。都会の淀みは地に這い蹲り、マッキンリーの奥深く清流で育った淡水魚のわたくしにも幾ばくかの呼吸の余地を与えてくれました。都合良くりんかい線の改札まで辿り着きましたが、さすがに前戦近くとなりますと簡単には見逃してくれないのであります。「システム」の従僕である駅員がわたくしにかけよってくる。わたくしのネコミミはその跫音をぴんとたったそのネコミミで探知しておりました。

「おいおい、君、そんなものを持ち込んだら危険じゃないか」

どうせ、たこ殴りにあうのだろうと思い、わたくしは相手を油断させるために、ヤツらが「危険」という昼夜を問わずCDのヘリを鋭利に研いだ去人CDを取り出しました。油断した隙にこの鋭利なチャクラムでやってしまえばいいのだと腹をくくったのであります。

「このCDの一体なにが危険だというのか!」

「この竹槍だよ」

と彼らはいう。これこれ、何をいうのだろうとわたくしは駅員を訝しがりました。わたしくは、手に持った竹槍を駅員に突きつけて熱い思いの丈をぶちまけたのでございます。

「これは半世紀強にわたり我が国の防空の要であったものであり、これをもっていない全ての国民こそを問い詰めるべきであり、わたくしが問い詰められる所以はいかほどもない!」

しかしどうしたことだろう。なんともけしからんことにわたくしは駅員に連行されそうになる。この異常な事態にわたくしは奮い立ったのです。

「我々、同人作家の灯火を消していいのかっ! 我が国のシンクタンクはその白痴性を露呈している! 我々大多数となるオタクをシステマティックに御すために<萌え>を我々の血税である国家予算の半分も使い捏造しているのだ! しかも、有名作家の多くはその血税を喰らいその手先に甘んじ、期待された<萌え>を捏造することに従事している! 我々オタクはそんな偽物の<萌え>に満足できるだろうか。答えはノーだ! 我々は<萌え>を家畜の飼い葉ように与えられることにうんざりしている! 我々は、全く、全然、<萌え尽きていない>!」

わたくしは、少し早いとおもいましたが、一つぶってみたわけで、それはまたしても大成功を収めました。

つまり例の社会現象であるところのドーナツ化現象でございます。まったく、この過密した改札の群衆の中で


x^2 + y^2 = r^2 (ただし、原点は竹槍をもったわたくし。rはオタクとわたくしの間に介在する「システム」の影響力)


が再現されたわけでございます。

というわけで、わたくしは駅長室に連行され、なすすべもなく竹槍を取り上げられてしまいました。

わたくし、一時の恥辱にまみれても、ここで「システム」に抹殺されるわけにいかないと考え、弁解をいたすという12年の人生の中でもかなりの屈辱の言い訳をいたすハメとあいなりました。

『「佳乃が流しそうめんをしたい」といったので、竹を持ち込もうとした。これは何ものを犠牲にしようとも達成しなければならなかったんだ。どうか殴らないで欲しい。あなた方にはわからないかもしれないが、殴られると痛いんだ』

とそれっぽい心境を吐露させた。

わたくしは、小一時間SMまがいの尋問を受け解放された。しかし竹槍は没収されてしまったので御座います。



それでも、わたくしが最前線の有明に到着することができたことは僥倖といっていいのではにないかと、この12年不運だらけの人生を振り替えて思うのでございます。トキワ荘に入居しようとしたが、「システム」がなにやら情報をリークしたらしく拒否され、あらゆる掲示板で投稿後のリロード後の間隙の間に即座に「記事は削除されました」となっている。それに比べて、わたくしは今回とてもうまくやっているのだという、この8年弱の周到な計画が成功しつつある実感を感じたのでございます。


わたくしは、さっそくスペースに辿り着くと、頒布の準備を完了し、元来の勝負となるコスプレの準備を整えることにした次第でございます。

更衣室の行列に並んでいると、きっと「システム」の関係者でしょう。わたくしのコスプレ前のネコミミはその異質な跫音の特定周波数でフィルタリングすることによって容易に<システム>の接近を察知いたいました。

「君、コスプレしてるよね」

<システム>とあろうものがなんたる失言だろうか。わが人生の仇敵である<システム>はその構成員の増大に比して教育が疎かになっている。ああ、なんと嘆かわしいことだろう。そして、それは同人作家たちの破滅への暴走を躊躇させることになるのだ。

たしかに、わたくしは、膨雀高校の制服を着用し、ネコミミを装着しておりしたが、「システム」はそれを「コスプレ」と認定しておるのです。なんたる近視眼かとわたくしは怒鳴り返すべきだったのでしょうが、ここは前戦。わたくしは細心の注意を払うことに余念がなかったのでございます。

「はじめましてだよ☆」

「ちょっときてもらえるかな」

こんなときに竹槍があったら! 「システム」はなんと周到な計画を練っているのか。「システム」は事前にわたくしから竹槍を奪うことによって再起不能なまでの位置に追い込んでから抹殺しようとしてる! 全てが謀略であったことをわたくしは理解いたしました。謀れた怒りと自身への無様さ。わたくしはそれを押さえようとしました。

「これのどこがコスプレかっ!」

「女装だよね」

女装結構。男装結構。問題なのは女性が女装していることであり、男性が男装していることのほうだ。女性を前提にした服飾や、男性を前提にしたそれはナンセンスだ! 本来の姿は服飾が性を規定し、規定された性がそれに立ち向かう姿ではないかっ! その中にこそ伊達と酔狂を僭称する非生産的な本来的同人がある! <システム>には第1手に9六歩を打つ才覚がない。それは千日手になろうかというわたくしが死んだ後の局面において全く根拠のない威力を発揮するのだ。よし、しかけるのは今だ!

「諸君! いまわたくしはコスプレしているように見えるだろうか! わたくしの姿に諸君が欲望する本来的絶対領域があるだろうか! もう一度問う! わたくしの姿に本来的絶対領域はあるかっ! 答えは彼らが答えてくれる!」

これもいつも通り大成功をおさめるに至る。


x^2 + y^2 = r^2 (ただし、原点はネコミミを装着し膨雀高校の女子制服を身につけ丈が余ったオーバーニーをまとったわたくし。rはオタクとわたくしの間に介在する「システム」の影響力)



つまり、ドーナツ化現象の再来でございました。わたくしは、完全に「システム」の手の上で踊らされていることを確信いたしました。コスプレ用に用意したモッズ系のボブソンのジーンズは結局装着することができなかったのです。

わたくしは駆け出し、スペースにうなだれてもどったのでございます。



わたくしは次の作戦に取り組むことにいたしました。それは、この会場の主、つまり「壁」付近の方々にお礼参りすることでありました。

わたくしは壁伝いに歩きながら<システム>の息の掛かった血清的なサークルを回避して、本来的サークルを慎重に見極め、地元より取り寄せた「白熊 750ml」をクーラーボックスより取り出して挨拶に参上していったわけでございます。

ところがどうでしょう。彼らはわたくしのつま先から頭頂までその視線で検閲したあと、いいから帰ってくれと、なんなんだと、いって追い帰されたのでございます。

わたくしは呆然といたしました。わたくしは、もしかしたら自分が本当に何か大きな勘違いをしていたのかもしれないと思いました。彼らが<システム>に取り込まれつつあるということも考えてみました。それはありえそうなことでした。わたくしはまさに四面楚歌。せっぱ詰まりまているのだと分かったのでございます。

わたくしどもの武器屋はチャクラムCDをドラゴンキラーのような値段で頒布しておりました。もしかしたら、このチャクラムCDはCD/DVDドライブで読み込まれるのかもしれないと考え始めたのはまさにその現場であったわけでございます。何ものかを殺傷するために研ぎ上げたそのCDはもしかしてその本来の使われ方が放棄され空論として皮相的に書き込まれたデータをCD/DVDドライブで読み込まれるだけになるのではないかっ!

わたくしは即座に行動に移りました。ネコミミを取り外し、そのぺたんとたたんだウサミミを元に戻したので御座います。

「こうなったら全面戦争だ!」

わたしくしは、じゃーぱねっとじゃぱねっとと歌いながら、金利手数料はK2Cが全額負担であること謳い、キュウリを切ってもCDにキュウリが張り付かないことを喧伝することにいたしました。わたくしは「Have A Nice Day!」といい「Please come back soon!」ということには慣れておりませんが、その紋切り型(コード)から伝達を期待した。



わたしは打ち上げ後、自宅に帰投し鏡を前に戦果報告をいたしたのでございます。

わたしは親指を手のひらにつけ、指をそろえツインテールに結った髪の生え際にさっと上げた。

「敬礼!」

わたくし、ここで大爆笑いたしました。12年で最上級の大爆笑で御座います。涙を流しながらわたくし大爆笑をし、有明に向かい再敬礼を行いました。それがなお、わたしをおかしくさせたようで、わたくしその晩、笑いながらとめどなく涙をながし続けたのでございます。

笑い死にしてもしょうがないと思ったので御座いますが、世の中ラーメンズ以外で「失笑死」にするのはなかなか困難でございまして、笑い疲れ2006年8月13日は幕を閉じたのでございます。

2006年8月14日。目覚めるということがおこったということは、わたしくが前戦に赴き死なずに戻ってきたのだということを理解させ、わたしくは本当に恥じ入るばかりでした。わたくしが先日の前戦で使用したサブマシンガンをみると弾薬が余っております。わたしはまだ、撃ち尽くして居なかったので御座います。まず、全弾撃ち尽くさないと、真の「システム」打倒へは至らない。


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完売あんがと!