kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

気付かないふりをしていたが、聞こえる。
「お前のせいだ」
と彼らはいう。
彼らはわたしが寝ているうちに裏口から入り込んで、わたしの耳元でずっとそう囁き続けていた。
彼らはわたしが目覚める前に、その痕跡をわかるように残して消えている。
彼らはまたやすやすと鍵の掛かったバックドアをすり抜け、「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」繰り返す。
わたしが起きている間にもそんなこと繰り返す。ぴったりと背中に張り付いて、わんわんと騒ぎ立てる。
会議の内容もよく聞こえない。面と向かって話している相手にすら聞き返してしまう。
自席で「くたばりやがれ」といって周囲の人間にぎょっとされる。
彼らにはそれが聞こえていないのだ。


正直、こちらは持久戦で補給路もない。「お前のせいだ」と繰り返すやつらは振り払っても振り払っても増え続ける。
このまま餓死するのは屈辱だ。討ち死するしかないと考えたこともある。


「そうだ、わたしのせいでお前らはダメになった。だからどっかにいってしまえ」
彼らはわたしに復讐を果たすまでいなくならないつもりだ。彼らはわたしのせいでダメになったし、わたしを滅ぼさなければ納得がいかないのだろう。
寝入っているところに忍び寄り、姿を見せずぴったりと背中にはりついて「お前のせいだ」「お前のせいだ」と繰り返すヤツらのために滅んでやるつもりはない。わたしもまたバックドアを乱暴にノックし「お前のせいだ」と繰り返す、一等醜悪なやり方で返答することはしない。
ヤツらには果実で作った甘い蜜を送り返すことにする。