kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

01月19日(火)

前日は、クスリを飲んだ後少し執筆を続けた。眠くなるまでなにかをかく。思考をアウトプットすると気が楽になる。意味があろうとなかろうと良い。誰に読まれることがなくてもよい。オレ以外に無意味でよい。書き物をしているゆくえさんがきて、少しお話をする。ゆくえさんも体調をくずしてぐったりしているが、雑談にのってくれる。どうしても人と話すのが好きで、お酒をのんでしまう。結果、ふざけをしてしまう。

朝、起きられない。ゆくえさんと楽しく恋バナに話を咲かせたのはよかった。だがまた胃に石塊がつまっている。頭もすこしふんわりしている。酒が抜けきっていないのだろう。最近、オレは誰彼かまわず恋バナをふっているせいで嫌われはじめている。なんだろう、特定の二人がおおむね一緒にいるって、なんか異常だけどおおくのかたがしているのだから、オレにもできるだろうし、その体験を記録にのこしたいのだ。共通のビジョンをもってアクションと決定し遂行するためにはコミュニケーションが必要だ。コミュニケーションもうまい下手がある。とくに地理的に場所を一にする時間がながいと演技的パーソナリティの切り替えも制限されるため、衝突を生みやすいだろう。いやはや、どうやっているものか、ワクワクする。
他人と一緒にいるというのは難しく、チャレンジングなことだ、だから、その挑戦はおもしろそうだ。

体調が優れぬまま、ぎりぎりに布団からでてリモート出社をする。酒がぬけていない。ふわふわしている。ホッシーと雑談をしているとき、そろそろ彼にも伝えておいたほうがいいだろうと休職の話をする。けっこう驚いたようで言葉に詰まったようだっがた、最初に出た言葉は、「自分とのペアプログラミングがよくなかったからってことってなりますかね?」という心配だったのでオレは笑った。そのへんは笹野マネージャーに伝えているし、原因ではないといっているし、ホッシーとのペアプログラミングはたのしいよ。そういうとホッとしたようだった。メンヘラのオレとしてはがっくり肩をおとしたし、いらりいらりともした。休職を予定するにあたって人事の方とも話したが、ただ寄り添って心配してくれる人がいないということだ。正直、オレはお前たちよりも精神医学を学んでいるし、双極性障害2型にたいするアプローチやうつ病にたいするアプローチをよくしっている。記述精神医学的に、現存在分析的に力動学的精神的に。

みんな自分が評価されることに精一杯なのだ。オレは自己評価を気にしたことはない。おかげで、後輩にすら給料は追い抜かれている。オレはお金よりも死にたくないんだ。死にたくない。だからお金にデメリットはあっても生きやすい環境を選択する。環境だけがこの病気の要因ではないが、一つの要因であることについては間違いない。

すべては頭の中で理解できた。だが、オレはメンヘラであった。あんなに性的魅力を感じていたホッシーが、オレにたいする配慮がまったくなく、たんたんとペアプログラミングを進めて行く。ああ、オレってメンヘラなんだなっておもう。面倒くさい人間なんだなっておもう。一言、体調大丈夫ですか?と声をかけてもらいたかったらしいのだ。社交辞令でもいい。とたんにホッシーが憎くなった。かけている黒縁メガネすら憎らしい。ただ、自分のかってな不条理な思いだから我慢しなければと思うが、制御できない。顔を見ているだけで憎らしく感じてしまう。相手への憎悪は自分への嫌悪感として跳ね返ってくる。自分が嫌いになる。端々の言葉にもトゲがでてくる。相手にも伝わって空気がぴりつく。なんの原因もないのに、空気がぴりつくのだ。見えない原因を創ったのはオレだ。オレがイライラしているからそれが相手にも伝染したのだ。

「すみません、体調がわるいので今日のペア作業は早めにあがっていいですか?」とホッシーに伝える。ホッシーもかなり思うところがあるらしく、「そうですね、じゃあ、きょうはここまでで。ほなさいなら」といってビデオ会議を切る。関係とは本当に脆く、あっけないモノだ。切断されたビデオ会議をみながら違う選択肢はなかったのかと思う。オレに主導権があり、コントロールできる範囲もあった。全部、間違った選択をし、間違った方向に進んでいった。オレはバカだ。ベランダから飛び降りよう。固い堅いコンクリートの上で脳漿ぶちまけて死ななければならない。

今のオレは、精神病患者とも人間としてもエンジニアとしてもハンチクでなにをやっても中途半端。

風呂に入って、クスリとお酒を飲む。眠くなるまでブログを執筆する。このブログは人気があって読者もおおいから、誰かによんでもらえているかもしれないとおもうと,嬉しい。はじめと言ってることは違うが、でもうれしい。好きな人も好きだった人も、好きじゃない人も、いつかこのクソブログを読むかもしれないという思いは、オレの死後も永遠に留保される。

抗不安剤を追加でのむ。寝る。

01月18日(月)

金曜日に深酒、土曜日に追い酒、日曜日は終日死亡、といういつものアル中を行動規範に従ってしまう。日曜日は死亡しているのでお酒を飲んでいないので、初級者の行動である。
やっと酒が抜けた頭。胃袋はまだ砂利が詰まって居るみたいだ。気持ち悪い。仕事か。スマホのアラームを止める。身体が動かない。二度寝する。目を覚ます。出勤限界まであと15分、危険です!とエヴァ風の状況説明が頭の中にきこえくる。伊吹マヤ二尉、おちつきたまえ。仕事なんて行かなくても死にはしない。だって、オレはいま幸福だ。不幸になる必要などない。不幸になどはならない。不幸にはならない。オレが不幸になるなら世界ごと滅びればいいのだ。

なんとか時間ギリギリに布団から這い出し勤務開始する。月曜日の退屈な定例をリモートアンドミュートという完全に自由時間にして気分を上げる時間にする。開発部の部署横断雑談会では、浦野さんがノリノリで話している。元気な女の子である。元気の女の子は好きだ。まるでオレは15歳じゃないみたいだ。やれやれ。浦野さんが空気を読まずに話し続けているのを聞いて気が滅入る。いいんだけどね、いいんだけどね、好きなんだけどね。ただ、ちょっぴりオレが死にたくて、そのそのテンションが気に障ったんだ。浦野さんのせいじゃない、オレのせいだ。すまない。そのうちやっと冷静になって、オレが自分がイライラしていることに気づく。お腹捨て居るかな? ちがう、お腹には砂利がつまっていて食欲はない。そうさ、朝のクスリを飲むのをわすれていたんだ。オレは空きっ腹にお茶で抗うつ薬抗不安剤気分安定剤を流しこむ。これで大丈夫だ。

退屈な定例がおわるとホッシーとのペアプログラミング大会である。ホッシーも体調を崩しているらしく、やる気がでないとのこと。ぽつりぽつりと会話を交わしながら、画面越しに一緒にコーヒーを飲む。喋り続けなくても良いのは楽なペアである。ホッシーな脈絡もなく防寒対策のカーテンを買おうと思っているんですよ、という。ほう、オレも隙間風には一考を案じている、どのようなものだろうか。オレは興味を持って食いつく。
基本的にはシートのようなものをカーテンの間にいれて、空気の壁をつくって直接冷気を室内にいれないシンプルなものだ。シンプルだがなるほど、効き目がありそうだ。ホッシーは「何種類かリンクをおくられてきて、どれをかおうかなあと」いう。オレが誰から送られてきたのかときくと、どうやら元カノから送られてきたとのことで、とても良いのでぜひ購入したまえ、というレコメンドらしい。なるほど、円満な別離ってあるんだよな、そういうことだよな。カレシ彼女が別れたと行って友達ではあると、そういうもあるんだろう。まあ、いいや。この個別の事案を一般化してオレの恋愛体験を向上できるとも思えない。オレはスタンダールしか読んだことがないために混乱しているのだろう。いや、別の角度からみればこれもスタンダールの恋愛論と同じことなのだろうか。オレは視点移動を試みるがうまくいかない。視点移動ができない体質なのだ。やれやれ。
「そういえば、カーテンを自動開閉するスマートデバイスは貸してくれるんですよね? 着払いで」とホッシーがいう。オレが使わなくなっていたので貸してよければ、そのまま使ってもらおうと思っていたのだ。「いいけど直接もってこうか? オレもちょっと遠出したいし」
するとホッシーが慌てて否定する。「いや、いいです。会いたくないんで。コロナだし。いや、kow さんだから会いたくないとかじゃなくて、誰にも会いたくない、家族にも」
言っていることは別におかしくない。でも明らかに怯えた表情をしていた。オレのなかでいろいろなことがダメになった。割れた? 壊れた? 砕けた? そんな感覚とはちがう。オブラートがすっとお湯に消えていくみたいに何もなくなってしまった。最初からなかったといえばなかったように見える。
ホッシーとオレのペアは気を遣わなくていい。ギクシャクしない。オレはいったい今まで何を期待してペアプログラミングしていたんだ?

早退する。風呂にはいって簡単なごはんをたべる。お酒をのむ。クスリを飲む。眠剤抗不安薬。死にたくない。

01月15日(金)

身体が動かない。前日「のい」さんとガタリラカンの話をして身体が薬物的にも動かない。でもいい。

自分を追い込む、勤務時間ぎりぎりに開始する。今日もホッシーとのペアワークだ。疲れ切っているせいか、勃起もカチカチにはならない。アマ勃ちしかしない。アマ勃ちなのにお汁はでるのだから人間って言うはへんな機械である。アクセルを踏んでも加速しない乗り物とかそんなものだろう。そこの二元論を深く問うつもりはない。オレは人間やってない。むしろ装置ならそれでいいのだ。

今日はホッシーもやる気を失っているようで雑談8に対して仕事2である。パーキンソンの法則である。仕事が予定以上に順調だったために、がんばる要素がないのである。オレはやめればいいとわかっていもてホッシーに元カノの話をする。元カノは新しいカレシをみつけて付き合っているらしい。しかしなぜか、元カノが今日ウチに遊びにきて泊まっていくといっている。オレは目を点にしながら???となる。仕事で東京に来る用事があって、宿をとるのが面倒なのでホッシーの家に泊まるそうだ。それは……あの……あれですか。深く考えるのやめる。犯罪はいけないが倫理観の話はどうでもいい。正直、オレに倫理観があるとは思えない。だけどオレの未熟な性的好奇心がどきどきして収まらない。別れたあと友達になったら泊まりにいくのは変ではないに違いない。だって友達だもの。元カノのカレシもカノジョが友達のうちに泊まるという自然な行為を止めることもできない。呼吸があらくなってパニック発作をおこしそうになる。イージーイージー。紙袋を口にあてて、酸素濃度があがるのを防ぐ。
三者ともそれを知っていているとしても、いかにもドライである。信用しているしていないの問題ではない、これはドライだ。ドライの本質だ。世界はドライだ。倫理ですらない、道徳ですらない。ただの肩肘をはらないコミュニティなのだ。

オレはオレがホッシーに抱いて隠していた気持ちが馬鹿らしくなる。強烈な倦怠感がオレを包む。

オレは午後休を笹野マネージャーに申請する。そして布団に入る。布団にはいれば何も起こらない。核戦争も隕石衝突も起こらない。寝る。
17時に目を覚ます。オレは泣いている。オレが神さまになった夢だった。誰を殺そうと、世界を破壊しようと不条理を敷いても当事者たちは神のおぼしめしといった。オレは去る価値もない場所にいる。泣いた。

起きる。風呂に入ろうとしたが鬱がひどすぎて手がでない。三角コーナーに入っているようなゴミ料理をつくってハイボールを飲む。お酒を飲むと鬱は外向性のベクトルをもちはじめる。自傷ではなく他害に向かう。このぐらいがちょうどいい。性的に狂っていて、正常な判断ができない気狂いのオレは、はやく自分自身を殺すべきだ。
さようなら、オレ。クスリをロックのウィスキーで流し込む。

01月14日

朝7時まえにスマホのアラームが鳴る。止める。腕がゴム製になったみたいに力がはいらない。背中に重しがのっている。起き上がれない。ウツはどこまでオレを苦しめるのだ。

結局、布団から出たのは10時前。寝ぼけ眼のまま仕事を開始する。今日もホッシーとペアワークである。胸が苦しい。本当に胸がきゅんきゅんするんだということを知った。しかし変な人と思われるわけにはいかない。この感情は隠さないと。
オレが助っ人で入っているプロジェクトも終盤にはいってきて、作業のリードはホッシーに任せることが多くなってくる。オレは意見を述べる程度で指示することはほとんどない。ペアリングの呼吸もよくこのへんは純粋に相性がいい。考え方、感性が近いのと議論にたいして互いがオープンに構えられることと、心理的安全性だろう。正直、ホッシーにそれは違うよねーと、気軽に伝えられるし、それにたいして互いにポジティブに反応できることが期待しあえていると思う。よいチームだ。
午前中も作業をサクサクすすめて、休憩で雑談をする。雑談では休日の過ごしかたは女性の好みなんかをきいたりする。そんなの聞いてもどうにもならないのだけど、オレの乙女心はそうやって自分を追い詰めたいらしい。

お昼休憩。ウツのせいで疲労が半端ない。あとパンツがびしょびしょになっている。ホッシーと雑談しているうちに、よくないお汁がでてしまったようだ。当たり障りのないロリ系女性がでている成人向けビデオを鑑賞して一旦「無」にしてから、お風呂にはいる。オレみたいな変態にはなりたくなかった。でもいい、そんなに遠くない未来にオレはきっと死ぬんだろうから。誰のメンツも潰さない。痕跡は残さない。すべてを消去する。それでいい。わたしは当人が望んだように孤独に死んでいったのだ、と墓石に刻まれる。なんて幸せなことだろうか。

午後の作業も作業と休憩、雑談のローテーション。ホッシーが元カノにふられた話をきいて深く考え込む。あまりにオレの乙女心が出過ぎて、なぜ、なぜと深追いしてしまった。ホッシーがその話はもうやめましょう、暗くなるんで、といってオレは謝罪する。ふられたのに今でのホッシーは彼女のことが好きなんだと思うと悲しくなった。よくわからないけど、オレはただのロリコンのはずなのに、なぜメンヘラになってしまったのだろう。15歳にしてロリコン、ショタ、メンヘラか。倍満である。

身体がだるいので早めに退勤する。性的なエネルギーは高まっているが勃起はしないし、射精して発散することもできない。もう、ホッシーのことは忘れよう。プロジェクトも終わるんだ。フロイド先生は人において異常でない性欲はないといった。生物学にはそうだろう。でも、ここでは多数派ではないという性的嗜好は一生隠し通さなければならない。一族、先祖まで愚弄かかる人間が現にいるのだ。オレはカッターを手首にかけてぼんやり考える。身体的苦痛で問題を後景化させるつもりか? だったら酒でも飲めばいい。原因は一緒でも後者の方が遙かに生きやすい。結局、どちらも野垂れ死ぬんだけれども。

ジャックダニエルをロックでクスリを流し込む。うまい。うまくて涙がでる。死ぬまではしっかり生きたい。

01月12日(火)

三連休明け。スマホのアラームは7時前になる。前日は遅くまで深酒をしていた。スマホをまさぐると無意識に止める。完全停止か、スヌーズか区別もない。ただ、とまればよい。遅刻しようが餓死しようが児ポ関連で逮捕されようがどうでもいい。寝かせてくれ。身体は鉛よりも重い。

日記が大分あいてしまったので、すこし状況を整理しよう。オレはシデムシ隊のなかでシデムシよろしくごそごそと動き回っていた、活動の場を失っていく。理由はたいしてない。自分から新しい領域に行こうとしなかったこと、フレックスの時間差ラグでチームメンバーと共通の時間をつくれなかったこと。それに徹底的に打ちのめされて、精神的に死んでいたこと。これぐらいが理由ではないか、自分の認識する範囲では。

ある朝の部署ミーティングで、栞と一緒になる。RMI チームのプロジェクトが遅延していて助っ人が欲しいんで、kow さんに依頼が行くかも、とのことだった。おお、こんなオレでも役に立てるような場があるのかと意気揚々とそのときをまった。だがなかなか、そのときはこない。実はこのとき部のマネージャである笹野マネージャーがその要求を蹴っていたのだ。RMI チームとオレの相性は最悪だから、そこと混ぜるとオレがまたやっかいな病気になるから無理だとのことだ。オレが笹野マネージャーに二枚舌を使っていたことが裏目にでてしまった。オレがRMIチームを離脱するときに、チームメンバーいけすかないんだよね、とめんどくさくて漏らしてしまったことがある。うつには原因があるはずだ、とみな当然のように思うのだ。だから執拗に聞かれる。まるで精神分析だ。何か嫌なことがあるだろう、本当はいいにくいけどなにか嫌なことがあるだろう、ここだけのはなしだからいってみなさい、誰にもはなさないから。何か、嫌な、事が、あったんでしょう。死ね。生まれてきたこと自体が嫌じゃ、ボケが。うつは、一般的には内因性であって、心因性のウツという分類はない。心理的に負荷がかかるような出来事すらウツの原因の一つでしかない。彼らはウツを誤解している。だけど、それを正す気もない。何か具体的な出来事が起因になってうつを発症した。そうでなければならないのだ。なぜならば、彼らマネージャーはリスクを管理するためにその火種をみつけるのに血眼になっている。原因がないに突然、うつになってしまったら、マネージャーはマネージメントできないのである。

そして今日の、人事部長と所属部上長のミーティングも同様であった。会社に対する不満を言いなさい、同僚に対する不満を言いなさい、待遇に関する不満をいいなさい。実際の言葉はもっとマイルドだが結局そこから論理的に精神的リスクをマネジメントしようというのだ。オレは笑いながらいう。自分がやっている仕事は楽しくないしわくわくもしない、でも不満はないんです、にこにこ。するとしたり顔で突っ込んでくる。なぜ楽しくないのか、ワクワクしないのか、不満がないという言質こそが韜晦ではないか。いや、サラリーマンが全員熱血漢でプロフェッショナルでプロジェクトXにでてくる人ばっかだったらやばいでしょうが。
オレは切り返して聞く。人事部長、オレはどうあったら理想ですか?
人事部長はドライな話、と前置きしていう。オレ自体がドライだしクビになっても仕方ないと思っているけれども、そのように前置きしてくれるのはなんだろう人として敬意を払ってくれているのだとおもって静かに感謝する。
「kow が継続的に仕事を続けられること、給与に見合うパフォーマンスを出してくれること、kow ご本人が当社で働くことに魅力を感じ、当社で成長できること」
給与に見合う費用対効果があるかどうか、そのあとに従業員として満足してすごしてほしいということだ。経営としてしごく真っ当な判断だ。人事部長は信頼に値する。でも精神医学についてはオレのほうが知識がある。そのなかでどうすべきなのか。わからないだけど、むしろ乗っかってみることにした。
「オレは当社において自分の能力に見合う仕事ををアサインされたことはないと思います。でもそれは不満ではなく、それ以外にすべ挑戦をさせてもらったことである。決して無為ではなかった。でも、いまこそ、自分の能力に見合う仕事をやってみたい」
もう会社を辞めるべきなんだと薄々はしっている。だってこの会社にオレの居場所はなく、ここにいても成長はない。最後に挑戦して失敗して、あとは落ちこぼれて転職先も見つからずに海に身投げすればいい。身投げしたオレの身体は魚たちに喰われてこの世界の一部に戻る。

あっという間にミーティングは終わる。オレは今のプロジェクトが一段落したあとに休職する約束だけをとりつける。それだけでいい。人事部長も部のマネージャも厄介ごとに辟易している表情だ。当然だ。オレだってそうなる。

そうった人事面談がおわると、RMI チームに依頼されたプロジェクトの助っ人の作業にもどる。この作業を終わらせないとオレは休職できないと自分に課している。RMI チームに中途の新人として入った二十代後半のジュニアエンジニアのホッシーと一緒にペアを組んで作業をする。感情を表に出さない暗殺者みたいな男子で、一見して中性的な男性だ。最初にあったときはボーイッシュな女の子かなと勘違いしたほどだ。作業はミドルエンジニアのオレがリードしながらペアプロをする。ホッシーホッシーで真剣に取り組んでくれる。なぜ? が多い。若手がこの何故を多用できるなら、見込みがある。そういうもんやろな、と飲み込んではいけない、何故が大事なのだ。何故? と聞かれる度にオレはしたり顔で説明し、もちろん最後に、これがベストプラクティスというわけではなくオレの個人的な見解なのでもっといいやりかたはあるかもしれない、などとそれっぽい言葉のような逃げ口上のような言葉を付け加える。でもホッシーは咀嚼して納得してやってくれるのでうれしい。
そうやって仕事を続けて一ヶ月。オレに問題が起こった。ホッシーと仕事をするとドキドキするのだ。何でだろうと思ったけど、これは間違いない。ホッシーを男性ではなくて、性的な対象として見てしまっている。おー、これは大変罪深いことになりましたぞ。ドキドキ。勤務開始前に、一旦ヌいて、お昼休みに一旦ヌいてへんなことをいわないようにしないとドキドキ。なんでこんなドSっぽい後輩にドキドキさせられなければあかんねん。く、む、胸がくるしい。こ、これがこ、恋というものなんだろうか。そういえば、ボーイッシュな女の子ってかわいいよね。あれ、オレはロリコンではなくてはショタだったのだろうか。そんなわけねえ、んなことあるか、相手は男やぞ、そんなはずあるわけないやろ。オレはロリコンだあああああ。
ドキドキするなら循環器科受診したまえ、オレは心臓の病気だ。放置しねば心筋梗塞で死ぬ。よろしい、放置して死んだろやないかい!

脳髄がなんかのウイルスにやられているんだろう。正常な判断ができない。退勤する。

温泉にはいって、お酒を飲む。明日はホッシーで射精しないようにする。強いクスリを沢山飲む。