気が緩むとすぐに呑んでしまってよくないですね、正月は。
湯引きの蛸がびっくりするほどうまいのが罪です。
吉里吉里を少しおもいだして触ってみた。シナリオスクリプトの層がスクリプトエンジン層と同じプラットフォームで動いているので、初心者は混乱しそうだとおもいましたが、プログラマにとってはそういったアクセシビリティは心地良くもあります。
ここをフレームワーク止まりにしたのは、この先のスコープに統合開発環境があったからで、それを通してすべてのエンジンが透過にあつかえるようになるんだとおもっていました。
まあ、なってないけどね……
イメージ的には吉里吉里スクリプトとAdobe Flashの中間に位置するようなノベル物用の開発環境なんだけど・・・
コミケだけみてもノベルゲーの同人作家はいて、高揚する内容から絶頂に達するもの、絶望するもの、不能になってしまうものいろいろあるのだろうとおもう。彼らがどのようなスクリプトエンジンをつかって自分の熱意や構想を実現しようとしているのか? 吉里吉里、NScripter、その他のスクリプトエンジン、HTML5、独自実装……
コミケで新作同人ソフトで新作のノベル系のソフトウェアを頒布するサークルが1000あるとする。(この数についてはとくに根拠はなくて、もっとすくないのかも)。絵、音楽、シナリオなど時間はかかる。ここではざっと仮定して平均48人月と仮定する。つまり、2人で毎日つくっていたら、1年で完成する作品。
ノベルゲームをつくるうえで、1次的な作業は、絵、システムパーツ、音楽、シナリオ、効果音になる。一次的故にもっとも表現に力が入る部分だ。
それらをつなぎ合わせる作業がスクリプティング、演出の作業だ。演出も表現として大変大きな割合をしめる。だが、スクリプティング?
スクリプティング、スクリプトを組むことだけど、単純に演出の結果であって、ここに創作的な内容はない(というから、プログラマは一斉に怒り始める)。すくなくとも、概念的にはただの作業でしかすぎない。
背景、効果音、BGMについてはフリー素材をつかっているとして、キャラクター、シナリオについては自分たちで作る作品だとすると、案外、それらに対してはできあがるのだ。(ゲームシステムで揉めていたら一生作品はできない。ここでは単純なノベルゲームを想定している)
だが、スクリプトを組む・・・・・・だと・・・!?
14歳にはよくわかるのだが、脳内にこのシナリオと絵がどのように表示され、どのように遷移していくかは完成している。
だが、スクリプト・・・・・・だと!?
たとえば、それを吉里吉里で実装することはほとんど場合できる。だが、それには条件がある。どうしてもそれを実現したいという熱意(とくにネガティブな熱意を持っている場合は実現しやすい)が必要だ。もし、とくに精緻に構想する人にとっては吉里吉里スクリプトではまかなえないだろう。KAG3の文法についても学ばなくてはならない。それでもだめなら、独自実装。
熱意の総量と吉里吉里スクリプトの制限の加算値が、吉里吉里スクリプトの習得の退屈さより大きければ、おめでとう、あなたは自分の構想したノベルゲーを吉里吉里で実装して頒布することができる!
もしそうでなければ、シナリオと絵をかかえて自分の妄想を強化したリ、逆に幻滅したりする自由をあなた1人でえることができただけだ。
それ以後はハードルが徐々に高くなるだけなので繰り返さない。繰り返したらおもしろけど、それはロシアフォルマリズム的なことであって、それなら劇場版パトレイバー2でもみたほうが形式だけなら心地良いってわけだ。
ノベルゲーは最初のハードルが高すぎる。
プログラマにとっては幸いだ! ありがとう、あたしたちに今日も仕事がある! でも十年以上まえに、プログラマの仕事はなくなるんだと脅されていたことを思い出す。そうだ、原油はすぐに枯渇する・・・と脅されたように。
自分が役に立たないプログラマかどうか、という閾値はおいておくとしてもほとんどのプログラマが単純なゲーム開発には不要になっていて、ちいさなアイディアもカジュアルにゲーム化して表現し、共有できるようになると思っていた。そして、とくに高度で独自性を誇張するという自意識過剰で妥協のない創作化のためだけにさび付いた古代兵器のようなプログラマが残るのだと。
でも、そうはならなかった。
iOSがflashを切り捨てたとき、それを呪いはしたが、HTML5の推進がすすむのだから・・・と思った。
だが、いまもってHTML5はゲーム的にそこを突破できていない。進化が遅すぎる。ゲームを作るゲームだとしたら、HTML5は進化の遅いプラットフォームとしてつまらない。ブラウザという歴史的コンテクストとローカルセキュリティがどうにもこうにも折り合いがつかないから、この結果はもうすこし時間がかかるだろう。
スクリプティングの問題をいちど抽象化しよう。
シナリオと絵がよういできればノベルゲーはすぐにつくれます。スクリプティングなしで。
GUIのインターフェースを採用し、D&Dで画面をレイアウトでき、それを出力すると、iOS/Andoroid/Win/Mac/Linux/...のものができあがっている。
半年に1回1000のサークルが新作をノベルゲームを発表していて、平均総工数48人月で、そのうち、非創作的なスクリプティングが20%だとすると、
1000×48×0.2=9600人月
が非創作的活動に従事して退屈な時間を熱意を消費しながら行っているということになる。
1コミケで9600人月の非創作的スクリプティング工数が発生している。1人で作業したら800年もかかるほどのくだらないスクリプト作業……
これをより創作的な活動にまわせたらいいのになああ。
それのためにプログラマはシステムを開発して、そして自分の仕事を失う。そういう運命にある。