kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

【去人たちRebootCamp#001】 合宿日誌――1日目

 前置きが長くなりました1日目がはじまります。移動日ですがリザルトは下記の画像をご覧ください。いろいろありますが、ごちゃごちゃ言わず、日誌を書いてきましょうね。

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 満充電の電池類、モバイル類、選択された冬季用ウェアをリュックに詰める。今回はロッジ宿泊なので自転車用リュック(18リットル)にしようとしたが、どうにも収まらない。収納力! ランタンを捨て、デジイチを捨てる。水筒も捨てる。ウェアがかさばりすぎる。いくら寒いといっても自転車に乗っているときは、ある程度のウェアになる。着込んで汗だくになるとアウトまで水没して暖をとる方法が一切なくなりひどい目にあう。(実際ひどい目にあっている……)冬でも速乾性の素材とウィンドブレーカーぐらいでうまく調整しながら汗冷えを防ぐ。だから、現地に着いた後の運動量の少ない状態で着るウェアはバッグに詰めることになる。このフリースふかふかできもちいなり……もちろん、自転車に乗っているときに着ることはできないのでバッグにいれないといけないがかさばるったらない。結局、ソロキャンプ用のザックを引っ張り出して詰め込む。その重量、11キロ。

 お、おい冗談だろ……テントもシュラフもソロキャンプ用お肉焼き焼きうまうま石焼きBBQセットもないのに。電池類、バッテリー類、ノートPCが重量とってんだろう。まあ、ヒルクライムも獲得標高ベースでも400メートルぐらいだろうし、いけんだろう、と。
(最大標高300メートルでアップダウンもそんなになさそうだと思っていたが、実際は獲得標高2000メートルになるとはこのときは夢にも思っていない)

 さて電車にのる。平日の通勤ラッシュのなかで弁当を買う。駅弁! 電車と旅において外すことはできない、というのはもちろんだけど今回は時間的にもどうしても社内でお昼を済ませておく必要があった。これは計画段階でも気にしていたのだが、荷物を持った状態でのヒルクライムの時間が読めていなかったのだ。寒さ対策のためにウェアの調整、走り方の調整のために何度か近場でヒルクライムの練習をしたがそこで調整が終わって荷物をもってのヒルクライム練習ができていなかった。ましてや、重量は11キロ。自転車1台背負って走っている状態である。17時の最終チェックインは、トラブルのリスクも含めて余裕だと思っていたが読めなくなった。

 電車で朝飯のサンドイッチを食べ、昼頃に「うに盛弁当」を食べる。加工済みのうにだ。味付けは濃くご飯に合う。うにの風味もほんのりあり、辛すぎることもなく、加工特有の臭みもない。満足、満足。可能であればビールを飲みたいところだ。外を見ると青い空が澄み渡っている。日差しの下では暖かそうなのに。だが、だまされてはいけない。寒波がきているのだ。

 そうしているうちに、駅に到着する。


 気温はもちろん一桁。日差しがあるのが救いだった。日差しを受けた背中はほのかに暖かみを感じる。駅前で自転車を組み立て、防寒装備に身を包む。山賊スタイル。肌が露出している箇所はなく、目だけが外世界と直接接している。

 準備をしていると一緒に電車に降りてきた人が話しかけてきたので、少し談笑する。「山にこもって勉強みたいなことをしたいんです」というとすこし戸惑った感じだ。まあ、そりゃそうだ。勉強するなら環境が整った快適な場所でやればいいのだ。

 もう一人、デジイチを持った観光客と思われる人と会話する。今日はどちらから? どこにいくんですか? 紋切り型のやりとりをして別れる。さて本番だ。



 海沿いの道は多少のアップダウンはあるが快走路が続く。路肩に石つぶてが多めだったが大型車、ダンプがひっきりなしであるが通行する車両の特性によるものだろう。狭路肩では大型車のプレッシャーで心臓バクバクです。出発時は気になっていたザックの重さも許容できそうだった。登りがもたつくがベダルがとまるほどではない。

 快調だった。これならヒルクライムの不安要素を抱えているが計画を前倒しにして貯金を作っている。多少安堵したとき。

 ……ん? ……あ?

 快走路を走っているときに黄色い看板を目にしてやり過ごしたあとUターンして内容を確認した。

「この先のトンネル、歩行者、自転車通行できません」
 
 そう、鬼ヶ城トンネルは軽車両通行禁止!! (ばばーん)


 お、おい……マジかよ。地図をみる。うーむ、迂回するためには山を一つ越える必要がある。ううむ、無理矢理にでも突破しても……そりゃ、まずいか。なんにせよ、違法だし。はあ、はあ、ぜえ、ぜえ。
 国道ではなくて県道で目的に到達するコースになる。標高も未知数。最悪のケースは山中での日暮れヒルクライムをしなきゃならない状況だ。余力、気温、時間、……頭の中で楽観論が優勢だった。ただ、無理はしたくない。ローカル線で輪行するか。「いや、なんとかなる」となんの根拠もなく確信する。山を挟んで併走する国道の最大標高が330メートルなら、県道もそこまで高くないだろう。ましてや貯金もあるのだから。この判断が地獄のはじまりである。
(このときは予想外のできごとに焦っていた。迂回路を見たときに貯金はなくなるだろうと思うとなおさら焦っていた。本当はきちんと迂回路があったのに、時間からくる焦りで間違った判断を早々に下してしまったのだった)

 綺麗な県道の幅員は徐々に狭まり斜度がきつくなる。走行ログをみてみると、平均斜度で7%程度か。荷物を背負った状態では苦行である。時速7キロでゆるゆる上りながら心拍は限界である。アウターを脱ぎさりペダルを回す。ペダルを止まらないようにするだけ精一杯。脳内は現実をキャンセルしはじめて、脳内一人弱虫ペダルをはじめる。坂を登っていると楽しいんだあああああああああああああああああああ。

 山頂ゲットだぜー。444メートル。寒い……

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 山頂を取ると次は険道ダウンヒルである。快走路であれば登った分の支払いを利子付きで返却してもらうところだ。だけど荷物を背負って重心が高くなっている上に、ひどいギャップと隘路と急カーブである。不良債権が焦げ付いてる。でも、できるだけ回収するんだ。命知らずのダウンヒルをやるんだよおおお。でも険道はいう。それ以上はいけない。そうだ、あたしは確かにその声を聞いたんだ。こんなくだらない事で死ねない。そろーりそろーりと下りきる。

 残り20キロ時点で足、腰、肩の余力はほとんどなし。荷物は腰に疲労を蓄積させ違和感の塊を作って、今となっては痛みに変わりつつある。ミニベロのフレームレイアウトと重い荷物は最低の組み合わせだ。快走路を150キロとは全然次元が違う。日が傾きはじめて、気持ちは焦る一方。となれば、あとは気力である。正直、ここで気力はまだ早いんだけどな。ペダルを回していれば、いつかたどり着く。でもこの焦りと気力こそが敵だった。この焦りはペダルのトルク制御を誤らせる。全開で回しちゃうとちょっとした休憩では体力のリカバリが効かなくなる。風が汗を引かせると同時にじわじわ体力を奪っていく。あ、この記述、もう少し先に死んじゃうやつだ。これって死の予感を漂わせてるんだよね。じゃなきゃ、わざわざそんな大げさなこと書かないじゃん。ついに死ぬのか。感慨深いな。

 16時30分。ライブカメラで遊ぶ。死んでたら、ライブカメラに写るわけがない。写っているのだから死んでいない。

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 16時45分、チェックイン。17時定時なんだろう、おばちゃんが慌ただしくいろいろと説明してくれる。口数少なく、無愛想にぼそぼそいっているのは死に損ないだ。おばちゃんは淡々と事務的だがどこか話しづらそうだ。すまんな……。たき火も初日はせずに二日目に。



 ロッジですぐにバーナーで湯を沸かし熱湯をフウフウして飲む。着替える。パラシュートコードを洗濯ロープにしてアウターを乾かす。まだ体の芯から冷えている。

 温泉に入る。運動のとき水分が足りていなかったこともあり、しっかりみずを飲む。でも長湯でこれ以上体に負担をかけると、ビールすら飲めなくなる! ビールだよ!!

 風呂上がり。そっと、ビールを注文。うめええええええええええええええええええええええええええ。この一杯のために、山を登ってきたんだよ!
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1日目に学んだこと。

  • ピンチの時こそ冷静になる必要がある
  • 時間に追い詰められているときに正しい判断を下すのは難しくなる

これプロジェクトにもよく言えることだよね。時間ばかり気にして周りが見えなくなっちゃう。
こうやって振り返ってみると自分があたふたしてるのみて、勉強になる。頼りないけど、しょうがない、人間だもの。