kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

5月18日(月)

今日は改めて、マンションの管理人にあいさつをする。一階の管理人室へいく。受付の小窓ごしに小さく会釈をする。オレは気づかれないようにほんの少し視線を下げて目線を合わないようにする。年配の管理人は驚いたように慌てマスクをする。新型コロナウイルス対策としてお互いのマナーだが、ことさら自分がばい菌扱いされているような気分になる。被害妄想は気を滅入らせる。
「今度、611 に越してきました kowasuhito です」
引越あいさつの品を手渡すと管理人は頭に手を当てて何度か頭を下げる。
「あー、はいはい。磯谷ってーます。あー kowasuhito さんあれだよね。区域外からきた。まあ、こんなんだからさ、悪いんだけどしばらくは自粛おねがいしますね」
きびきびとして話しぶりと視線の強度。自分の価値観を強く自信がある。社会的活動の場では推進役をやり有り難がられる。一方、オレのようなコミュニケーションが苦手な人間にとっては指示的アドバイスによって自己を少しずつ削られかねない。インファイターには気をつけろ。
「ええ、はい、もちろん。すいません、こんな時期に入居してしまった、すみません、申し訳ございません。みなさんにご迷惑をおかけしないよう極力自粛します。ご迷惑をおかけしますが、今後ともよろしくお願いします」
オレもぺこりぺこりと何度も頭を下げる。死ぬほど謝れば大概の人は責めの手をゆるめてくれる。やりすぎると、変な人と思われて距離を取られることもある。願ったりかなったりである。

次は役場に転入届を出す。二人ぐらいが何かの手続きをしている。マイナンバーカードの申請者がどのうこうのとかニュースで言っていたが我文町には関係がなさそうだ。転入届は必要だが急ぐものでもないので自粛すべきなのか気が引けたが、これならソーシャルディスタンスは確保できるだろう。すぐに手続きはおわる。マイナンバー通知カードも住所変更しますので、次回お持ちください、とのこと。そうか、あれも変更が必要であったか。新しい住所を証明するために住民票を一枚もらう。会社に住所変更を申しでなければならない。

まだ自分の部屋ではない誰かの部屋に戻る。本格的に片付ける。拭き掃除、防虫スプレーで収納場所をクリーンアップ。荷物を詰める。段ボールがひとつ空にふたつからに……そこに入りきらないことが分かると取り出して別の場所に入れたり出したり。
地獄でもやっていた記憶がある。我文町でもこれを繰り返すのか。でもこれが因果というものなのだろう。終わりの見えない作業を続ける。