kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

6月29日(月)

目覚ましのアラームがなる。途中なんどか覚醒した気もするがきっちり時間まで睡眠をとれた。スヌーズを連打する。軽く目をつぶる。次のアラームが鳴る前に起きる。オレはオレの意思をどうやっても試したい。オレが思っているように起き、眠りたい。アラームに起こされたなどあってはならない。
ベランダのサッシを全開にする。白く煙っている。天気予報は曇り。これが雨なのか霧なのかわからない。我文町全体を覆う靄。これが徐々に濃くなっていくと、世界は異界化して裏世界が顔を見せる。我文町はそういうことがあっても不思議ではない。
朝の儀式をこなす。頭の中は仕事に押し込まれる。まだ先のことを考え始めている。冗談じゃない。脳の中をフラッシュする。Zwiftで三十分のワークアウト。一番負荷の低いワークアウトを選ぶ。序盤で限界を感じて負荷を90%に落とす。それでも限界。二十分で中断終了。汗が滝のようにながれる。当然だがFTPを下方修正しないといけない。認めたくないものだ。二五〇ワットを割っていそう。怠ける、体力が落ちる、この因果関係は自然なことだ。オレがそれをきちんと知り正しくワークアウトすることで効率はあがる。知っていても今のFTPは見たくない。そういえば最近体重計にものってない。なぜだろう。あやはにやにや笑う。突然現れてびっくりさせないでくれ。十四歳の末期だからか。十二歳だったころ、世界と自分を壊して、十四歳になるまでに再構築してしまった。壊す勇気がない、壊すことができなければ時間は進まない。壊す方法がわからない。時間も進まずに下方修正することは、この幻想世界を不完全なものにする。オレぐらいはオレがはっきりと大嫌いと明言してやれるこの世界は絶対に守らないといけない。あやはサムアップしながらオレをダメ人間と罵ってくれる。

汗がじわじわと染み出てくるぐらいにクールダウンが終わっていない状態のまま勤務開始。Slack のメッセージを見る。雑談をチャンネルを見る。みんな楽しそう、オレはそこには加われない。多種多様な話題が流れてくるし、知っている事に関してはオタクくずれっぽくメッセージ投稿することはできるけどメッセージの先に人がいるのを想像できない。ボットか人か区別できないほど優秀なボットがいる、たぶん人よりも豊富な知識で話題を展開できるボットだ、でもそんなボットと会話したくない。オレがメッセージを投稿したいと思わないのは、たぶん、そういうことに近い。
業務のチャットをながめてぼんやりする。オレが休職した直後に笹野マネージャーがRMI チームとミーティングしている議事録を見つける。期待してみてみる。オレが休職してチームメンバーがへったが今後のことについてのラフな意見交換。議事録には笹野マネージャーの発言ばっかりだった。ベテランの栞、瀧山の意見もない。今の人員で困らないという意味は行間に読み取れる。気持ちの部分が少しでも知りたかったのでその部分は残念。
お昼は冷食を温めて食べる。食後は風呂にはいってリフレッシュ。仕事のことを頭のなかから追い出す時間を増やす練習。
午後はオレが休職していた間のソースコード差分を確認する。大量のプルリクエストがある。ワクワクする。どれだけ課題が解決しているのか。チャレンジしているのか。メンバーが成長したのか。プルリクエストを追えば多くの情報が得られる。プルリクエストとはなにか、については個々人にズレがあるのが面白い。チーム単位でやり方が一緒ですらない。個々人ごと。多様性ともいえるし、理解のオーバーヘッドともいえる。デザインパターンを思考停止という人もいれば、経験をもとに生まれた形式であり設計に関する理解を加速させるものだと言う人もいる。これは寝殿造りですね、マニエリスム建築ですね、と語るのは楽だ。どちらが価値があるとは言えない。それはチームが決めることだ。ただ、現在のプログラミング言語パラダイムにおいては抽象化が必須なのだ。これは言語の問題であり抽象化が必須だとは思わない。

頭が仕事に占領される。汚染される。怪我されている。あやの服はボロボロになってところどころ肌が露出している。頭から追い出すのだ、やつらを。自転車にのる。女縄市方面にこぎ出す。町は薄い靄に包まれている。これから先の山の頂上部分は隠れている。路面はウェット。気温はそれほど高くないがなんといっても湿度が高い。汗が乾かずジャージがぬれぬれ。登坂区間に入る。勾配はゆるい。最高地点は二〇〇メートル弱。多くの山道は頂上付近の勾配がきつい。勾配一〇%を越えてくる。踏む。頭から追い出す。踏む。感覚で理性を追い出す。家にかえる。
頭のなかに仕事が残っている。あとは酒しかないか。ハイパーマートにでかける。半額のお惣菜を買いあさる。家にかえると風呂にはいる。誰もいない。大浴場に一人。無音。追い出す、やつを。座禅を組んでみるが相対的に仕事の雑音が増すだけだ。この頭を誰かぶっ壊してくれ。
風呂から出ると洗濯物を干す。あとは寝るだけにする。お刺身をあてに日本酒を飲む。酔いがまわらない。あやを呼んでくると執筆作業の校正をお願いする。拒否されたので、執筆作業をする。執筆作業はあべこべで支離滅裂、頭の三分の一ほどに仕事がこびりついて離れないから、焦点がいったりきたり。これでは社会不適合者である。執筆をあきらめる。どうか意識よ、飛んでいってくれ。

薬をお酒で流し込む。眠気がくるまでまんじりともせず、苦悶。