kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

7月12日(日)

ずっと雨が降っていて布団にいる。意識を失っている間は幸せだった気がする。脳みそがしびれる。身体感覚が希薄になる。悪質な消極的メディテーション。やりすぎると精神が荒廃する。ずっと目を覚ましていたような気がする。ただその悪質な瞑想から脱出したのは十七時ごろ。身体性と接続されない意識は死の恐怖すら非現実的なものにする。目をつぶって気を失うのと、飛び出して気を失うことの違いがわからなくなる。深い眠りにつくことが幸せなのだ。オレは身体を起こす。ここは独房のように静かで安全だ。たとえシュレディンガーが実験のためにこの部屋にオレを閉じ込めたとしても、人間原理の主体として彼の観測を否定できるほどに強固な壁に覆われている部屋だ。
珍しく妙な空想をする。排尿し水を飲む。脳がしびれる。空腹。とても。身体が戻ってきた。パスタをゆでてペペロンチーノを食べる。チューブからニンニクを追加して味覚と嗅覚を過度に刺激する。この部屋で起こることは何もかも嘘っぽくて薄っぺらい。ネットでニュースをみて世界を同期する。あやは横で寝転がりながらタブレットで本を読んでいる。何をよんでいるかと思えば、 人はなぜ不倫をするのか (SB新書) である。そういうことは宮台の本でも読んだ方がある意味毒がすくなくていいと思うが。女子はそういう本好きだよな、というと、うるせい黙れ、このむっつりスケベとあやに睨まれる。そんなに面白い本なのだろうか。あとでこっそり読んでみようか。主要なネットニュースを見て回る。この部屋が世界とつながる。この部屋からで延々と歩いて行けば米軍の爆撃によって四肢がバラバラになった少女がいる中東にでも行ける。その距離は想像によって数センチにまで縮めることができる。よし、部屋をでて、風呂にでも入ろう。
風呂には先客が四人ほど。いつもガラガラなので四人という密度は普段のオレにとっては苦痛である。今日はまだ半覚醒状態なので自己がうまく立ち上がらない。視線も水蒸気によって乱反射して強度が低い。自分の身体の輪郭を思い出すように丹念に頭、顔、身体を洗う。それでもまだしっくりこない。今日は風呂が熱い日。半身浴でのんびりつかる。ストレッチで身体の痛みを受信してみる。脳が少しめざめるが、まだ身体全体の統一感はでてこない。はあ、まあいいか、ゆっくりと風呂に浸かる。脳だけが湯船に浮かんでいる。
湯上がりにホームランバーを食べてのんびりする。日が落ちると、眠くなる。休日は二十時間は寝ている気がする。
酒を飲みながら少し執筆作業する。ディスプレイの上を細かい羽虫たちが散歩している。指で圧縮してゴミ箱に破棄する。何匹も殺すが今日はキリがない。網戸をみると少しあいている。しかも、大量に網戸にはりついている。7days to die の七日目のごときラッシュである。アースジェットで一網打尽にすると、降り積もった羽虫が床を黒く染めている。今日は風が強かったらのってきたのかもしれない。アリの巣の労働人口が安定すると、オスのアリが生まれ始めて羽をつけて空中で交尾し、雌は情報ありとなって新しいアリの巣を作るという。アリの巣ころりをドローンで散布せよ。リア虫を殺戮せよ。人間に性がなかったら言語も不要だったろうに。正確には性的倒錯か。

身体がけだるい。薬を飲んで寝る。