kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

7月19日(日)

八時に目が覚める。身体が動かない。身体の中にある一切の動機や欲望がなくなってしてしまった気がする。radikoをつけたままずーっと横になっている。断片的な睡眠を続けながら日が落ちるのを待っている。十八時。これまで餓死してもいいかなと思っていたがやはり我慢はできない。なんの苦痛もなく横になっているよりも空腹のつらさからの逃れたいという気持ちが勝った。人間やめても生き物は辞めていない。起き上がると歯を磨いていない口の不快感、顔の脂のべたつきという人間らしさが戻ってくる。何もしたくない。外にもでたくない。とりあえずお湯を沸かす。パスタを食べる。コンロに火をかけるとそれで精一杯、ベランダにでて椅子にすわる。洗い物などもってのほか。胸が重い。両肩が重い。目が鉛のように重いだるい。ミートソースでパスタを食べる。おいしい。でもよく味がわからない。おいしい。食べ終わるとただ椅子にすわってぼーっとする。久しぶりに死にたい。基本的には無気力からくる消極的な逃亡が多いのだけど、久しぶりに死にたい日である。頭の中の言葉が死にたいで埋め尽くされる。殴れて痛いとか、裏切られて嬉しいとか、誰かが成功して妬ましいとか、因果ははっきりしているものならばまだ制御しようもあるのだが、今日の死にたいは理由を隠している。ついに弱気にんなってあやに、どうおもう? なんて普段しないような質問をする。あやは突き放したようにオレをみると、考えろ、それが嫌なら死ね、という。ひでえなとは思うが、まっとうな言葉な気もする。でもこの死にたいと面と向かうと死ぬ気がする。対峙しようとする度にすごくイライラする。逃げるのがきっと正解だと感じる。お酒でも飲むか。キッチンにはあやがいて、挑発的におれを見ている。そうやってずっと死にたいから逃げ続けて、怯えて生きていくのか。あやがどうも情緒不安定である。間をとろう。いったんコーヒーをいれる。カフェインで覚醒させれば気の迷いで感情も変わるかも知れない。外をみながらコーヒーを飲む。飲みながら思う。オレは死にたいと伝えたい相手がいない。そうかそうか。他者が存在しないから心的エネルギーがショートしているんではないか。変質したエネルギーは攻撃性となって傷つける他者を求めている。自分を傷つけてもいいし、他者を傷つけてもいい。歪んだ内的エネルギーは一旦排出しないと。それかオレを閉鎖病棟で拘束してもらうしかない。身体が動かない、山に殴りに行けない。仕方ないので壁に頭を打ち付ける。痛みとともに物理的な脳への振動で思考を物理的に入れ替える。痛みは、精神優位の世界を身体優位の世界に置き換えてくれる。よりリアルになった世界は、オレがやっていることをバカみたいなことだときちんと理解される。オレはおかしくなってわははははと笑う。
世界と同期する。ネットニュース。くだらない。ツイッター。どうもない。誰もが何かを宣伝している。音楽、イラスト、小説、アニメ、いろんなオタクコンテンツ、技術コンテンツ、ニュース。ただただコンスタンティブに。記号で頭がフットーしそう。商業的に良いものをつくる監督の名前はおおすぎてオレには覚えきれない。それも簡単なことではないんだろうけど、そなものをつくりづづけるならもっと論理的にやってほしい。破綻前提で理詰めでつくった作品、好き。残像に口紅がすごいのは、破綻するルールのなかで人として物語が進んでいくところだ。たった数文字でオレは涙を流した。言語とイメージと象徴。言語を奪ってしまうというルールは誰も予想しない発展をみせた。絶句を強要されるキャラクターたちと、なにも描画されない世界は読者たちが全てを終わらせることができた。幸せだった。

肩こりと目の奥の鈍痛がひどい。風呂にはいる。三人の先客がいる。年配の男性が身体をあらっているがくしゃみをしまくっている。オレもせっけんが鼻にはいってしまうとくしゃみが止まらなくなる。この密閉された共同浴場でそれだけくしゃみをされると感染の可能性を考える。そんなことを気にしていたらストレス死してしまうのか。新型コロナウイルス安全と思う人たちの自治区に行くか、危険と思う人の自治区にいくか。安全と思う人たちの集団が性に合ってる気がする。ウイルスの被曝量がおおければ発症率もあがるだろうが、かかる可能性を覚悟して何かをしているほうが気持ちが楽だ。兵士の突撃による飽和攻撃作戦に加わってしまったら覚悟を決めるしかない。あやはオレを蔑んだ目でみている。死にたいといいながら歯切れの悪い選択をしている矛盾を強く非難している。確かに。死にたいとは飛び降りて死ぬ事ではないのかも知れない。結果、死ぬことではなく、ベランダから飛び降りることが目的なのではないか。世界と自己をつなぐ橋が必要なのだと抗議して自殺するメンヘラ男。この解釈はどう? あやは不満そうに出て行ってしまった。お菓子を切らしているからオレにも何か買ってほしい。

あやがいなくなったのでお酒を飲みながら執筆作業。首がだるい。一日二十時間ちかくねている気がするが眠気が脳の中にずっと鎮座している。
頭を入れ替える。L4Dをやる。前回エクリプスのリクリエーションでクソエイムでもなんかなることをしっている。この世界のルールでどううまくやるかだ。Easy で一時間ほどでクリアする。特殊感染者にうまく対処できなかったり、とりあえず撃ちまくるというだけでもいける。Easy では。ラッシュ時は壁を背にするというメソッドだけは意識する。あとNPCが優秀。マルチではそうはいかないんだよなあ。
興味を持っていた Her Story を少しプレイする。がっかりする。こういうのやりたかったのにな。これの形式をもっとえぐぐすれば去人たちZEROも読めるものにできないか。映像とテクストによる世界構築をきちんとゲームの中でやる必要がある。それが正当性をともわなくてもいい。誰もが不都合な仕組みとしてそこに存在してあざとい制約をもたらしてくれればいい。ゲームの楽しみ方は簡単で、断片邸に物語を読んでいく楽しみは lain とも通じるし、奇妙で無意味な話ですら快楽を感じられる。去人たちZEROの「ゲーム性」については「箱庭」をギミックに使うことを最後ににちのさんと議論をしたところで終わっていて、なにも進んでいない。Her Story のシンプルさ、楽しさをそのままに断片をあつめる話を作りたい。誰か、作ってよ。オレでなくてもいい。共同開発者が必要だ。キチガイでも怖がらずに対話できて、マウントをとってこない人で、時間もあって、そこそこのスキルもあって、原案を一緒に練ってくれる壁打ち相手でもいいし、ゲームに興味がなくてもいつでも気軽に話せる親友でもいい。なあ @lice よ、オレの書いた去人たちZEROをどう思うよ。去人たちⅡの件は拒否したオレが悪かったと思う。でも、オレは一杯一杯だったんだ。でも、それはこっちの事情だよな。あのときにオレに余裕があれば話は変わったかもしれない。でもお互い去人たちでボロボロだった。去人たちにいる時間のほうが現実世界にいる時間より長かった。@lice は最後にどうして中にいれてくれないんだい? といってオレは扉を閉めた。それで夢がさめると思っていた。でもオレは今でも夢が覚めない。十四歳末期にさしかかったオレの話は去人たちとは遠く隔たり、何も語れなくなった。去人たちが去人たちとしてそのままでいるからだ。一方でオレは十四歳末期にさしかかり去人たちは大きく変わって見える。オレは変わってしまった。これは否定的な意味でもある。オレは去人たちが比較的平凡な作品であることを知り、その物語を平凡にすることに興味をもった。生き残ってしまった者が、去った者に対して無礼な批評をするのは好ましいことではない。だけど、オレが拒否した @lice はそのようにすれば戻ってきてくれるものだと思っていた。@lice はたき付ければ反論せずにはいられないはずだ。だけど、連絡はない。いまもない。異常なことは一つだけ。去人たちⅡをオレに託したことだ。去人たちⅡの原稿は良かった。パロディやオマージュをなんども語ったオレたちの全てだったと思う。だが異常でもある、有瀬にそこまで語らせる理由の場所が中盤過ぎる。オレと @lice は構造の話が嫌いだった。だけど、構造を嫌いとするのは印象の話ではなくアンチロマンとしての話だった。有瀬は実在しているようにすらみえた。ノゾミもそうだ。鬼気迫る文章をみたときに、残光に口紅をの二次創作かなと思った。でも実際は違うように思う。二次創作というプラットフォームのなかで生き生きと創作できる場を見出した @lice が何も考えず、構造やテクストやコンテクストを置いておいて、何かをやろうとしたのではないかと、今になって考えている。おそらく構造のなかで考えることが正しくない。制約をずーっと何年も考えて、そのなかでなに新しいことを目指した @lice は最後にそこも取っ払ってしまって、自分がやろうとしたことをただ純粋にやったのではなかと感じている。そこに動機はない、だたそのときにそう思ったんだと思う。オレたちが二人で酒を飲んでいるときに突拍子もないことを思いついて実行したのように。
@lice はオレに二度と会いに来なかった。最後の原稿をメールで送りつけて来た。何も書いていない。オレがこれをゲームにすべきだとも言っていない。でも知っている、これが最後の原稿ということを。命をすり減らして書いた原稿だった。@lice はあと六十年は生きるつもりだった。でも、その文章はこれが最後でもかまわないという意気込みだった。自殺や死について物語内で言及するのは彼の作品にとっては異常だったと思う。死に抗わない小説はむしろオレを不安にさせた。オレは @lice にメールしたが返答はなかった。

死にたい。薬を飲んで寝る。