去人たちを作れなくなったうつ病プログラマーの地方生活日記

創作に絶望すると、世界が反転した日記

9月14日(月)

代わり映えのない月曜日。現実逃避で一三時間ほど寝ている。メンタルの調子は決していいわけではない。これといって原因は思い当たらないのにざわめいている。精神的に疲れているというメインの自覚症状といくつかの注意深く観察しないと気づかない症状。自己嫌悪、イライラ、寂しさ、不安、失望。愚痴を聞いてくれる人もいない。食欲もない。逃げるように仕事を開始する。

バグ修正作業。細かいログトレースから原因の仮説をたてて修正する。集中力がない。心がモヤモヤしている。冷静になって心を掘ってみると原因はイライラだとわかる。あまりにも人と話していないために、人と話したくて話したくてしかたないようだ。それが阻害され続けたために、他者について攻撃的になっている。つまり八つ当たりを始めている。八つ当たりは建設的ではないし問題解決にならない。それなのに心をコントロールしなければ破滅的選択を選んでしまう。オレが権力をもっていたら八つ当たりを通じて問題解決することも可能なのだと思うと本当に恐ろしい。暴力によって理屈や倫理や法を無視して自分の思い通りに他者を屈服させる。すくなくともオレにはその素行が備わっていて、それを抑止しなければそれを実行しうる。動物園にいくと虎をよく見に行く。コアラはかわいい。違う、虎の話である。李徴が虎になった話はオレの話だとつくづく思う。オレがポル・ポトと同じ環境、世界情勢で育ったらなら、大量殺人を命令する人間にならないのは難しいと思う。オレはそのぐらいもろく流されやすい。とくに教育のインプットが偏っているとすれば脆さを補正する注意力、判断力も失われるだろう。
昼休み、冷凍ごはんでたまごかけごはんを食べる。お風呂に入り昼寝をする。
午後も集中が続かない。あやがまた上から目線でいう。「自分を否定して、それを跳ね返して他者を傷つけようとしている。わかるでしょ?」。わかる。lain を好きになればいい。自分が嫌いなのは棚に上げて、何かを好きになりたい。

仕事が終わるとサイクリングに出かける。自分を殴らなければならない。小さな山を二つ登る。地方の裏道的な急勾配の山道。街灯はない。ライトの光量が足りない。光害なみの装備が欲しいと思う。USBのリチウムイオンバッテリーのライトを持っていない。バッテリーが消耗品でバッテリーが交換できないからだ。ロングライドでは緊急時に途中で電源を補充したいと思うかもしれない。そうするとどうしても電池式のほうが柔軟性が高い。電池ならばコンビニで補給できるからだ。もう何十年もそのプラクティスを実践してきたが分かったことがある。オレはまだコンビニで電池を買って給電したことはない。モバイルバッテリーを持ち歩き、充電式の電池を持ち歩き、結果、電源に困ったことはない。むしろUSB式のライトでよくて、そのかわりにモバイルバッテリーを増装すればよいし、なんならモバイルバッテリーは充電済みがコンビニでかえる。緊急時には十分だ。USB式のソーラーチャージャーももっていることだし、今更乾電池に頼るのは不毛だ。勾配一〇%を越える坂道。秋虫の声、ぜいぜいというオレの喘ぎ、足の重さ。ハンドルをぎゅっと握る。オレはペダリングを止めない。息が苦しい。頭がじーんとしてくる。耳がおかしくなる。コーナーの先は山頂だ、コーナーの先は山頂だ、ざんねん山頂ではない。心はその度に折れる。だが、楽しい。この道はオレを殺しにかかっている。オレの期待とはまったく関係なくその物理的地理に従い道は出来ており、オレがいくらドラマチックにエンディングを向かえようと準備したところで淡々と登り続ける。オレは指揮系統から足を切り離す。ペダリング速度はオレが管理することを放棄する。前意識に任せる。オレはトルクではなくて回転数だけに注力する。回転数は減ったり増えたりするために負荷がかかる。いかに一定の角速度で回すかがポイントである。自分を痛めつけるにはトルクだけになるが、早く登るには回転数とトルクのバランスになる。ふと気づく。オレは現実の世界でもただ楽に峠を越えたいだけなのだ。オレは永遠に孤独だとして、その孤独に翻弄されず、淡々と道ゆきをできるだけ楽しみたいのだ。夜の林道は虫たちの世界だ。孤独ですらない。圧倒的な秋虫たちの声量はオレを異物だと教えてくれる。でも残念、オレは坂道と戦う。急なつづら折りから峠に。そこから下りへ。途中、若い鹿二頭が道の端で文字通り道草を食っている。彼らは自動車の音から逃げるのは得意だが自転車のような静かな移動媒体に気づくのが苦手だ。なんだろうと周囲を勘ぐっている鹿が戸惑っている。オレはブレーキをかける。やべっなんかきてんじゃん、という鹿が道路を逆方向に横切ろうとするので止まる。さーせん、さーせんという感じで鹿が去って行く。オレが猟師ならお前等は死んでおったぞ、もうちょっと緊張感を持ちなさい。

家に帰って冷凍ささみを解凍してサラダを作る。ささみには大根おろしを死ぬほどかける。ドレッシングとポン酢。うまし、うまし。運動後のタンパク質うまし。

本当にいやな一日だった。何も解決してない。あしたもきっと嫌な一日であろう。クスリを飲んで寝る。