11月某日

前日の夜から絶食、眠るために少しだけお酒を飲んだ。時間は六時半。いつもは出るのをしぶるふとんからもさっと起き上がる。ウツが甘えだと言われる仕草である。大腸内視鏡の検査なんて苦痛に決まっている。でもその苦痛と出口が入り口になっちゃうんであろうワクワクと、自分の身体を試す、測定することが大好きな好奇心とが入り交じった朝だ。朝起きてパソコンをつけてエロアニメを見る。異種姦触手モノである。俺も数時間後にはそうなるんだと思うとこれまでに見たことがないほどに陰茎が怒張し、ウェザータッチでちょっと触れただけなのに大量に射精してしまい、日焼けした畳みに白濁した液が飛びってしまう。今日はしごく真っ当な医学的検査なのに俺は何をやっているんだろう。ティッシュで畳を服ながらつぶやく。俺って最低だ。

自転車で名破市の病院まで向かう。腹ぺこで水分もあまりとっていないがらヘトヘトになる。病院につくと受付をすませて腸内洗浄液、3リッターのたっぷり下剤を飲む。これがなんと昼間までちぴちぴとやる。俺なら居酒屋に3時間いたら4リッターからのビールは干せる自信がある。仕組みは簡単だ。浸透圧的に吸収されない水分を時間をかけながらチビチビ経口摂取する。そうするな腸内にたまっているお通じが押し流されてじゃばじゃばでてくるという仕組みである。これを何度もくりかえし、出口からでてくる液体がほぼ透明になるまで繰り返す。また腸のうねうね折りまがった部分にはお通じが残りやすいので歩きながら振動させてみてね、などというわけである。まずい洗浄液、院内ウォーキング。
1時間ほどするがまだ便意はこず。2時間ほどするとぎゅるるるぅとくる。でちゃぅぅぅぅ。排出された弁はまっちゃっちゃ。これが透明になるまで出し続けるのか...
何度もくりかえすが、俺が排出する弁は泥かヘドロみたいに色がついている。人造人間、というかゴーレムなんやろうな、俺は。だって生きてる実感ないし、生まれてきたことに一切、全く、自信ないもんなあ。看護師さんが、 kow さんは便の色どうです? よくなりました? と聞かれるが、まだ泥水ですとこたえる。わかりました、じゃあ次出した後みせてください、いけるかどうか確認します。もう12時をまわっていて検査の時間がせまっているのでいけるかどうかを判断するらしい。あんまり人にうんこみられたことがないからなあ、なんか恥ずかしい。びちゃびちゃやし。立派な自慢できる極太のやつでもないしなあ。恥ずかしいなあ。でもそれがなぜか気持ちいいなあ。そういえば家畜人ヤプーを読んでいたときもキンモーとおもっていたけど合理的で抑制される気持ちよさにとても共感出来た気がする。
などどやっていると、差し込み。トイレにこもってほぼ水分を排出する。しゃーしゃしゃー。高圧洗浄機かよ。跳ね返りが怖い。うーむ、まだちょっと残ってるなあ。生まれて初めて病院のトイレにある呼出ボタンを押す。看護師さんがきてくれて排出内容から検査の可否を判断してくれる。はずかしい。
「いいですね、kow さん、これならいけますよ」
はあ、よかった。俺が幼いころ、うんこは贈り物だったのにな。いまはどうして恥ずかしいのだろう。もしかしたら、俺にはうんこを贈り物として受け取ってくれる親が存在しなかったのかもしれない。確かに、育ての親は俺のことを橋の下で拾ってきたと何度も明言していた。俺がうんこが嫌いな理由がいま分かった気がする。

腸内が洗浄されたあとは、鎮静剤を点滴で投与する。もちろん説明はない。なんとなく鎮静剤なのだと察する。ぼーっとするとかふらふらすとか、きっとそういうタイプの点滴である。だが、俺には効かない。効いているんだろうけど、ドキドキが半端ない。今朝見てしまったエロ動画の触手とそれらが出たり入ったりしているところをみていたせいだとおもう。そんなことされたら、性別関係なくやばいに決まっている。ふう、俺はここが公共の場であることを思い出し素数を数える。まさか勃起したままカメラを挿入されるわけにはいかない。
「先生、ごめんなさい、術着を汚してしまいました」
「いや、いいんだよ、いますぐにわたしが綺麗にしてあげるからね」
ぎゃー、ヘンタイだー。こんなことは絶対にあってはならないのです。素数です、素数を数えるのです。ふうふう。

さて、いよいよ本番です。俺は完全にビジネスモードです。おう、かまわぬ、やってくれたまえ。
「はーい、じゃあ、ゼリー塗りますね-」
年配の看護師さんが手袋をはめてジェルをつける。そして俺のアナルにガツンとくる一発を見舞う。嘘だろ、もうちょっと優しくしてくれるとおもったのに。俺の……俺のバージンが……しくしく。いや、そこまで期待はしてなかったけど、挿入速度がマジではやいねん。もうちょっとゆっくりでもいいと思うんだ。個人的にはそういう乱暴な扱い好きなんだけれども。

そしていよいよ、超長い触手が侵入してきます。しかも、わざわざ、Live で画面を見せる仕組みです。俺の腸内を犯しながらその画像を俺にもリアルタイムで共有するというものでとても親切である。もはや、そういうプレイだ。俺は直腸部分が弱点なので挿入直後の呻く。せ、先生、や、優しくして。先生は関係ありません。これは医療行為です。
腸はつづら折りになっていてその中を内視鏡が進んでいきます。やり方はかんたん、無理矢理押し込んでうねうねと奥に進んでいくのです。コーナーを曲がる度にみぞおちにボディブローを食らったような重い感覚を伴います。俺はアガーアガーとわめきますが、先生はそのうち気持ちよくなるさみたいな感じで意にも介しません。目からは涙が、鼻から鼻水、口からはヨダレ、内視鏡の映像は涙で歪んで何もみえません。うーん綺麗なもんですねえ、などと先生はいいますが、俺は陵辱されて苦痛のどん底なのです。

検査がおります。結果をきちんと聞きたかったのですが、腸の違和感でうまくきけません。逆に言うとポリープもなかったようだし気になる所見もなかったのかなと勝手に想像しました。あと、痔は結局あったの、なかったの?
「はい、kow さん、この車椅子にのっていくださいね。すこしベッドで休憩しましょう」
おい、人生初車椅子がここなのか。だから鎮静剤あんま効いてる気がしないんですが。意識レベルと身体レベルは別やろうし、ここは専門家のいうことを聞いておこう。
車椅子で仮眠ベッドまで運ばれる感じ、すごく嫌だけど、考え方をかえれば疾病利得のもっとも気持ち胃行為でもある。はあ、俺はなんでも利害関係で考えるようになってしまった。死にたい。
ベッドに横になる。看護師さんが毛布を掛けてくれる。

知らない天井を見つめながら思う。医療の現場はカンバンである。ただカンバンというプロセスとアジャイルというプロセスの併存が現場のモチベーションを支えている。適切な医療処置と寄り添いがセットになって価値を届けられるサービスとなっている。(これがいいかどうかはおいておくとして)利用崩壊とはこの原則を実現できなくなることだろう。理を捨て実を取る医療になったとき、それは誇りのある仕事ではないと、それまで誇りをもって仕事をしてきた医療従事者は思うんだろうなとおもった。


俺は腹ぺこのまま家にかえる。絶食しているから優しい食事でもたべようか。
酒はうまい。肉もうまい。米もうまい。これは俺の勝手な世界だ。クスリを飲んで寝る。