01月18日(月)

金曜日に深酒、土曜日に追い酒、日曜日は終日死亡、といういつものアル中を行動規範に従ってしまう。日曜日は死亡しているのでお酒を飲んでいないので、初級者の行動である。
やっと酒が抜けた頭。胃袋はまだ砂利が詰まって居るみたいだ。気持ち悪い。仕事か。スマホのアラームを止める。身体が動かない。二度寝する。目を覚ます。出勤限界まであと15分、危険です!とエヴァ風の状況説明が頭の中にきこえくる。伊吹マヤ二尉、おちつきたまえ。仕事なんて行かなくても死にはしない。だって、オレはいま幸福だ。不幸になる必要などない。不幸になどはならない。不幸にはならない。オレが不幸になるなら世界ごと滅びればいいのだ。

なんとか時間ギリギリに布団から這い出し勤務開始する。月曜日の退屈な定例をリモートアンドミュートという完全に自由時間にして気分を上げる時間にする。開発部の部署横断雑談会では、浦野さんがノリノリで話している。元気な女の子である。元気の女の子は好きだ。まるでオレは15歳じゃないみたいだ。やれやれ。浦野さんが空気を読まずに話し続けているのを聞いて気が滅入る。いいんだけどね、いいんだけどね、好きなんだけどね。ただ、ちょっぴりオレが死にたくて、そのそのテンションが気に障ったんだ。浦野さんのせいじゃない、オレのせいだ。すまない。そのうちやっと冷静になって、オレが自分がイライラしていることに気づく。お腹捨て居るかな? ちがう、お腹には砂利がつまっていて食欲はない。そうさ、朝のクスリを飲むのをわすれていたんだ。オレは空きっ腹にお茶で抗うつ薬抗不安剤気分安定剤を流しこむ。これで大丈夫だ。

退屈な定例がおわるとホッシーとのペアプログラミング大会である。ホッシーも体調を崩しているらしく、やる気がでないとのこと。ぽつりぽつりと会話を交わしながら、画面越しに一緒にコーヒーを飲む。喋り続けなくても良いのは楽なペアである。ホッシーな脈絡もなく防寒対策のカーテンを買おうと思っているんですよ、という。ほう、オレも隙間風には一考を案じている、どのようなものだろうか。オレは興味を持って食いつく。
基本的にはシートのようなものをカーテンの間にいれて、空気の壁をつくって直接冷気を室内にいれないシンプルなものだ。シンプルだがなるほど、効き目がありそうだ。ホッシーは「何種類かリンクをおくられてきて、どれをかおうかなあと」いう。オレが誰から送られてきたのかときくと、どうやら元カノから送られてきたとのことで、とても良いのでぜひ購入したまえ、というレコメンドらしい。なるほど、円満な別離ってあるんだよな、そういうことだよな。カレシ彼女が別れたと行って友達ではあると、そういうもあるんだろう。まあ、いいや。この個別の事案を一般化してオレの恋愛体験を向上できるとも思えない。オレはスタンダールしか読んだことがないために混乱しているのだろう。いや、別の角度からみればこれもスタンダールの恋愛論と同じことなのだろうか。オレは視点移動を試みるがうまくいかない。視点移動ができない体質なのだ。やれやれ。
「そういえば、カーテンを自動開閉するスマートデバイスは貸してくれるんですよね? 着払いで」とホッシーがいう。オレが使わなくなっていたので貸してよければ、そのまま使ってもらおうと思っていたのだ。「いいけど直接もってこうか? オレもちょっと遠出したいし」
するとホッシーが慌てて否定する。「いや、いいです。会いたくないんで。コロナだし。いや、kow さんだから会いたくないとかじゃなくて、誰にも会いたくない、家族にも」
言っていることは別におかしくない。でも明らかに怯えた表情をしていた。オレのなかでいろいろなことがダメになった。割れた? 壊れた? 砕けた? そんな感覚とはちがう。オブラートがすっとお湯に消えていくみたいに何もなくなってしまった。最初からなかったといえばなかったように見える。
ホッシーとオレのペアは気を遣わなくていい。ギクシャクしない。オレはいったい今まで何を期待してペアプログラミングしていたんだ?

早退する。風呂にはいって簡単なごはんをたべる。お酒をのむ。クスリを飲む。眠剤抗不安薬。死にたくない。