05月26日(水)

身体が重い。動かない。限界の時間。這いずり出す。這いずりだして執務室に向かう。PCの電源を付ける。勤務開始のボタンを押す。
何も変わっていない。繰り返されている。暦だけが進み、オレが棲んでいる世界コンテクストは変わらない。

二度目の休職をして職場に復帰した。復帰した直後に人事部長からかけられた言葉は衝撃であった。

「次、休職するようなことがあれば解雇になると思ってください」

頭が混乱した。
でも簡単な話だ。会社が社則で解雇できる条件を書いているのだ。フルタイムに耐えうる心身の状態であること、ということだ。会社都合による解雇じゃないという根拠となり、オレは離職手当が減額される。ちなみにこれを「通常解雇」というらしい。
お賃金をだして期待する成果物をだしてほしい、だから社員の適正としてそのような条件があるのは当然だろう。はあ、見てなかった。二回目の休職するときに先にいってほしかったけど、復職後にいわれるなんて。まあ、迷惑かけてる身なので文句をいうのも筋違いだが、流れを見る限り会社はオレをお荷物扱いしたことがわかった。直接、口頭で伝えるばでもなく、チャットで一言だ。
会社で働くモチベーションがゼロになった。何も期待されていない。厄介払いしたい社員。
実はそれ以前では、個人的に気に入っているニッチなプロダクトをつくっている会社で気に入っていた。アイソレーションタンクの制御ソフトウェアとかクールで可能性もある。でも、ハードワークに耐えられない人間はノーサンキュー。分からなくもない、資金も潤沢なわけじゃないし、スタートアップとしてバリバリ働いてくれるエンジニアを重宝したいだろう。そういったアドレナリンジャンキーのエンジニアに苦言を呈するのがオレの役目でもあった。今本当にそれをやる必要がありますか? あれより、これを先にやる理由ってなんですか? それより先にやることありますよね? そこの仕様に詰めるぐらいなら他にもっと大きな問題がありますよね? チームを育成しなければ今後このサービスは維持できなくなりますけど、また天才プログラマに頼んでいいんですか?
そんな問いかけをする愚者の賢者役をやっていたオレはどんどん憂鬱になっていた。そういう役回りをやることで組織に「気付き」を提示できるという思い上がりだった。結局、オレも傲慢だったのだ。その傲慢のためにオレは馘首になる。オレの責任。合理的だ。
だけど、正直に言おう。腹が立ってしょうがない。逆恨み、かっとなってやった。合理性はない。だけど、人間とは基本的に合理性のない存在だ。合理的にであるのは、簡単なことじゃないと思う。自分は無力で伝えきれなかった、だから相手を恨む。結局、オレはその程度の小さい人間だ。

オレに与えられているタスクは「窓際社員用」だ。やっても、やらなくてもいい。退屈なタスク。でもなにも進んでいないとマネージャーからどやされる。オレはこの手の作業を「雪かき」と呼んでいる。積もった雪はかき出さなければならない。そこに新しい発見もない、成長もない。ただ必要だからやる。本当に必要なのは、雪かきをしなくてもいようにするには? だけど、その問いを任せてもらえる訳はない。だって馘首間際の社員なのだから。

自分の立場は良くわかっている。崖っぷち。ただ、粛々とタスクをこなせば、昇級も一生ないけど、給与が保証される。正直、これはいうほど悪くない。8時間脳死していれば生きるために必要な金額を補償してくれる。オレはそれをヨシとした。この会社がなくなったら終わりだが、現状ではオーライだ。

与えられたタスクをプログラムで自動化する。あとはまとめサイトをみたり、個人の内職をしたり。おいしい仕事だ。当然、他の優秀なエンジニアはプロダクトの価値向上に貢献している。オレもそうなりたかったなと思う。でも、その感情自体が奴隷根性である。彼らがビジネス的なエンジニアリング活動で価値向上、自身のスキル向上をはかっていることに、なんら焦りを感じる必要はないのだ。
自分が彼らたちのおこぼれに預かる乞食なのはそれでいい。オレにとってはこれでも文句をいうほどの待遇ではないのだ。なにせ、この待遇なら死にはしない。それどころから、余剰資金だっていただける。何を文句をいう必要があろうか。

生きるか、死ぬかは8時間にかかっている。
仕事8時間=脳死時間、睡眠時間=8時間、のこりの8時間をどうするかだ。家事全般をのこして5時間としよう。5時間をどのようにいきるか、それがおれにとっての幸福論の題材になる。いまはまだうまくいっていない。会社を憎悪し、世界を憎悪し、誰彼かまわず八つ当たりすることで心を落ち着けている通り魔みたいな人間だ。

ちなみに、今日の5時間は

  • 自意識を失うまでしこたまお酒飲む
  • 去人たちZEROのスクリプトを修正する
  • 日記を書く
  • 世界を恨む、とても激しく、でも、諦めつつ

だった。

眠剤を飲んだ。寝る。明日こそ良い一日に。
自分のことを最低な人間だと思うが、人に迷惑をかけてないなら、まあ、楽しんだらええ、とみんなが激励してくれる。
(オナニー同様の)日記を書くのは愉しい、何ヶ月がぶりに気付いた今日だった。