良くできたものは、壊れにくい。
良くできているものは、ただ、良くできているだけで、滞留する。
去人たちを作るとき、このことを考えていた。
もしこれに抵抗していこうというなら、今後<まとも>な作品なんて作れないと予期していた。
これには相当な決心がいった。
わたし(たち)はゲームを作りたいと思っていた。
正直、ゲームを作るという営為をただ、漠然としたかった。
何をどのように作るかは全く考えていなかった。
純粋に理性的に一定の利益をあげるゲームを作ることは、努力すればできるだろうと思っていた。マクドナルドのように。ある作品をある品質で、定期的にリリースすることはできる。
もちろんこの種の、誰でもできる、ことは並外れた勤勉さが必要だ。
でも、わたし(たち)にはそういったものは、どうも性に合わなかったのだろう。なにしろ、まどろっこしい。そして、勤勉さというのは、大嫌いだった。
わたし(たち)は見事に、ゲーム業界の門戸たたいただけで、中に入れてはもらえなかった。それは仕方ない。だって、わたし(たち)は勤勉ではなかったのだから。
3Dエンジンを実装もできない、四元数の意味もわからない、行列変換もできない人間を雇うなどという馬鹿げた会社はない。
わたし(たち)は何が作りたいのか? わたし(たち)は何をつくりたかったのか?
作ってしまったものを、陳列棚にならべて、わたし(たち)はよくよく観察した。
作ってしまうものは作ろうとしていたから出来たのではない。
わたし(たち)は、クリエーターではないのだと分かった。
陳列棚に並べられた壊れたものたちに、わたし(たち)は学ぶ。それを壊し尽くすべきだ。
壊しつくし、対消滅させ、エネルギーに変換する。
わたし(たち)が何かを、意欲して作れるのはその後ではないか。
壊れたものたちを、精査して満足してはいけない。
ここで行うべきアプローチは二つ。
・壊れたものを修復し、もとあるべき姿にすること。
・壊れたものを形なくなるまでばらばらにすること。アトムであってもいけない。
この作業は、並行して行わなければならない。
修復していく作業、破壊する作業。マルコフ過程。修復する中で、今の修復状態により、次の修復が決まる。現在の破壊状態から、次の破壊が決まる。
修復履歴、破壊履歴をスタックしておく必要はない。完全に修復することと、完全に破壊することで、回顧すべき残余はどこにもないくなる。
これについて語るのは語り尽くせない。尽くせるはずがない。だから、この決心をできるはずもなかった。
(つづかない)