kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

7月10日(金)

朝五時過ぎ。早朝に覚醒する。早朝といっても、日はのぼっている。とても寝た気がする。起きて二度寝しなくていいと思ったのだから起きる。朝のルーチンワークをすませる。天気予報は雨だが、外は曇り空。散歩でもしようと出かける。川沿いを四十分ほどぶらぶら。犬の散歩をしているおじいさんが向かいからくる。このとき相手をみるのか、周囲をみて誤魔化すのか、いつも迷う。そんなことを考えると余計に視線がうごかせなくなりスマホに逃げる。なんでもないスマホ画面を意味もなくぽちぽちしながらやり過ごす。散歩のシーズが遠くからオレを狙っているなと思っていたがやはりオレのところにぐいぐいくる。この場合はオレにムツゴウロウを憑依させるしかない。よしよしよし! おじいさんとは張り付いた笑顔でうなずき合う。お犬の目はみれるがおじいさんの目はみれない。犬とじゃれ合いたいが気まずいのですっとその場をあとにする。急に土砂降りで雨がふる。雷雨並。目に雨粒がはいって痛い。まあ家に帰れば着替えられる。動ぜずに徒歩帰宅。玄関でびしょ濡れの服をすべて脱ぎ捨て全裸になる。着替えて風呂にいく。朝風呂派の先客がいるのでどうも、とゆったりとあいさつして風呂に浸かる。ストレッチをして身体をほぐす。風呂をあがる。仕事をするまえに軽い朝食を食べたいが、あまり食欲がない。コーヒーを飲みたいが空腹にコーヒーを流し込むと調子を悪くする。コーンポタージュでかるく胃を満たす。さあ仕事する。

世界を切り裂く架電。父から。嫌な予感がする。ついに親族の訃報か。でも違う。もっと嫌な方の連絡。要領は得ないがパソコンがどうにかした、とのことである。まず、緊急性のない問題に架電してくることにイライラする。でも、父当人には別の緊急性があるのだ。なんどもなんども、アダルトサイトがらみで対処をさせれてきてうんざりなのである。フィッシング詐欺のページを開いては書いてある電話番号に連絡したらいいのか? とか、マルウェアに感染しては起動時にデスクトップにエロ広告が表示されるであるとか、ページを開いたらウイルス対策ソフトの警告が表示されたとか。母が見つかってしまって、母は鬼のように不機嫌になって軽蔑されている。ヤフーが開かなくなったんだけど、という謎の説明を翻訳すると、デスクトップメニューバーに固定されていた Internet Explorer のアイコンがなくなったという事らしい。そんなことで呼び出すんじゃない。イライラいながら修正する。電話を一方的に切る。また電話がかかってくる。ついでにでんでん虫みたいのけして、とのこと。でんでん虫? 要約するとMicrosoft Edgeのアイコンを消して欲しいようだ。そっちを使うのが望ましいんだが、もう説明したくない。しかも無害なものをどうして消したいのか。Microsoft Edgeを起動するとスタートアップ画面に検索結果ページがサジェストされている。あー、そうか、表示履歴がね、でちゃうしね。これ母にみられたら怒られちゃうね。そうだね、はいはい。ってか「おまんまん」「時間の止め方」じゃねえよ。子どもか。はいはい、見ないふり見ないふり。消しますねー。エロいことは分かるし、むしろ枯れなさには尊敬する。良いことだ。エロいことは健康の秘訣だろう。学ばないことが嫌。本当に父に必要な者は履歴の消し方とスタートアップページを変更するということだ。年齢もいけば学習障害も多少あるだろうし、しょうがないのかもしれないが。でも失敗するかもと思ってもエロ動画みたい欲求が高い状態って若さを感じる。この、広告は罠かも知れないがクリック、したいっ! ナイフのように切れていた十二歳の時はオレにもその勇気があった。ウチの男性陣は性欲強すぎるんだよ。父は自分磨きがプロだし、兄は反社会的存在の罠にかかってお金とられるし、オレは誰もいないとおもって外の藪でおちんぽ出して自分磨きしていたら、見知らぬ人が家の二階から見ていたり、オレと相思相愛だと思っていた女の子にメール送ってたら、その友達の女子からあやが怖がっているからやめてっていうメールが飛んできたり、性的なトラブルにはことかかない。なんか最後の違う気がするけど、まあいいか。そうか、父に期待するからイライラする。期待をやめればいいか。こっちが期待をやめても向こうが、オレがなんとかしてくれるっていう期待を辞めてくれない。あー、分かった、これがイライラの原因だ。それすらも諦めればいいんだ。わかったよ、オレは今日時間の止め方で検索して自分磨きするよ、それでいいんだろ。もういいんだ。許してくれ。

世界が壊れた。壊れたなら直さず置き換える。仕事を始める。出勤打刻さえしてしまえば、あやがしっかり監視してオレを仕事モードにしてくれる。Slack にログインして未読チャットを消化する。本当に退屈なメッセージしかない。拍子抜けだがそれはそれで健全かもしれない。さてなにをやるか。先日受けていた相談を考える。新型コロナウイルス対策のリモートサポート機能の追加プロジェクトのふりかえり。これまで参加していたデイリースタンドアップのことを思い出す。マネージャーとメンバーの1:Nの会話。複数人いるのにN:Nの会話にならない。それに疑問を感じていない。時間を無駄と感じない。思考停止しているチームか完全にマネージャに抑えつけられているか。いずれにせよ、心理的安全性はゼロ。一緒にランチを食べるところからはじめたいぐらい。雑談がなさすぎる。オレが一人で考えていてどうする。当事者たちが何を感じているかが大事でそれはオレが一人で考えても無意味。無意味な上にオレが勝手な仮説をたててもしょうがない。オレ自身がアジャイルたらなければ。この問題を解決できるステークホルダーはそのプロジェクトメンバーたちだ。オレは急遽、みんなの感想をヒアリングするミーティングを設定する。まさに俊敏にやらなければならない。告知して来週開催などもってほか。そのリードタイムに合理性はない。ミーティングにはゴールが必要、そのゴールがあるから議論に集中できる。ミーティングの最初にはゴールをメンバーと共有し、認識の違いがあればすりあわせる。議論にフォーカスし脱線を減らす、また脱線を指摘するためにも必要。ゴールは、kowasuhito がプロジェクトメンバーたちが感じているもやもやを理解できること。メンバーたちがもやもやを共有することではない。それはふりかえりの中で行われるべきことだ。ミーティングがはじめると、すんなりもやもやがでてきている。協働作業、ペアワーク、モブワークができていないこと、コミュニケーションのすれ違い、プロジェクトの納期や機能は守れたが開発していても楽しくなかった。どれもオレ個人が共感できる体験。なかなか言い出せなかったのかもしれない。ここは安全な場だと宣言しないと、宣言することが大事だしファシリテーターもそれをサポートしてあげなければならない。マネージャーが仕切っているときのあるあるである。マネージャーもフラットに対応しているにもかかわらず、あまり言い出せないことがあるし、さらに勇気を出して困っていることをあげても放置される、アクションとして実現されないと諦めに支配されて困っていることを言わなくなってしまう。そこは「困っていることがない問題」として捉えられる。
ヒアリングの結果、ミーティングのゴールは達成された。メンバーは互いの困っていることに共感し互い議論を深めてしまいそうなぐらいにモチベーションが高いようだった。メンバーは腐っていない、良いことだ。自分たちがこれを解決できる能力を身につけて、今後も成長していける組織になれるのか。難しいところはある。ランダムにサンプルされたエンジニアをとりあえず、グループとした、というような同期のないチームがうまく開発できるのか。でも、開発プロセスについて考え続けるというクセは今後も必要だ。動機のないチームが激的に成長するわけがない、とメンバーたちが気づけばオレ的に最高だが。
仕事っぽいことをして肩こりがひどい。小さい頭痛、吐き気、目の奥が重い。お昼はカップラーメンと菓子パンを食べる、風呂にはいって、横になる。少し楽になる。
午後はくだんのふりかえりのアジェンダファシリテーターとして考える。なぜ、ふりかえりをするか、というアジャイルの基本を再度おさらいしたほうがいいだろう。まだチームとしてワークするにはコミュニケーションが未熟すぎる。いきなりオープンなブレスト型のふりかえりはできないだろう。プロジェクトの客観的メトリックスとメンバーの主観的感情メトリックデータを集めるところからか。そのデータの diff をもとに議論するならエンジニアとしてしやすいであろう。コードメトリックスはコミット行数、リリース数、バグの数、プルリクエストの数、そのコメント数と修正行数、プルリクエストの開始から終了までのリードタイム。感情データはプロジェクトイベント毎の喜怒哀楽、タイムラインぐらいか。この客観データから意見を出しあう。ポイントは楽しみだったプロジェクトがいつ苦痛に変わったか、というところか。苦痛になった以降は深掘りしても今の段階では意味がない。雪だるま式に悪化していく開発プロセスは笑いのネタにはなるが、メンバーにはトラウマを引っ張り出すだけだ。よし、客観データを集めるなかで心理的に柔らかくなってもらってディスカンションにはいってもらえたらいいな。どうなるかわからないがあとはその場の変化による。構想だけ練ることができた。つかれた。退勤しよう。なんもしてない。オレにはやくコードをかかせてくれ。

疲れ果てて、すこしぼーっとする。お風呂にはいる。お風呂で管理人の磯谷さんと一緒になる。夕方は磯谷さんが管理業務を終えて入浴する時間帯であることを知っている。ぐいぐい話しかけてくるタイプの方なので、日中あやがうるさい日は誰とも会話したくないのでこの時間はさける。今日は多少の覚悟をもっていた。何も会話なしであれ、何も会話なしであれ。視線を一切合わせない。身体をあらって誤魔化す。なんとかなれ。最近は潜ってますか? だめであった。でも覚悟していたので驚かない。これが突然だとパニックになるからオレは意気揚々と会話を始める。想定内。しかしこれがよくなかった。オレがオレを制御できない。相手を遮ってしゃべりまくること。だれかオレの上の口にチャックをしてくれ。結局、天気と世間話と新型コロナウイルスの話をしながら、二秒の間があったのを見逃さず、ではお先にといって風呂をあがる。ありがとう磯谷さん、むしろ仕事脳がシャットダウンできました。

夕飯は昨日かっておいた半額おべんとう。食欲がないのでちょうどいい量。そのあと執筆作業をする。二時間以上も書いたり消したり。ひどい文章をあやに怒られる。オレは舌打ちして、貧乏シャンパンを入れる。あやはオレに背中を向いておやつのポテチを食べはじめる。

ひどい一日だった。またこんな仕方ない日が来ることをじっと待っている。薬を飲んで練る。