kowさんは天ざる大好き

創作に絶望すると、世界が反転した日記

6月30日(火)

目覚めと同時に身体チェックをする。ロングライドの影響がでるなら二日後ぐらい、だが足に筋肉痛はない。眠気に覆われているが倦怠感はない。お酒も少ししか残っていない。今日は、朝一にタンブルウィードで乗馬。仕事前に乗馬なんて素敵やん、などど思っているがさっさと身支度しなければ遅刻しそうだ。でも、オレは朝風呂を良き習慣としてなんとして維持すると心に決める。
朝のルーチンワークをこなす。皿洗いが大嫌いだから最初にやる。それが片付くとすごく心が軽くなり相対的に楽しくなる。お風呂もざっとはいる。脱衣所の時計をみて焦る。部屋に戻ると五分もどっている。相対性理論でも時間は戻らないはずだ。過去には行けない。だとすれば、脱衣所の時計がずれていたのだ。
自転車を駆っていそいでタンブルウィードに行く。時間ぴったり。厩舎ではお掃除をしているお姉さんがいる。距離は三〇メートルほどあるか。視線は交わせない。今のうちに言葉だけ交わす。おはようございますとあいさつするとお姉さんもしゃっきとした声で返してくれる。ちょっとだけ他者が起動した。よしあとは受付でしっかり視線を交わしたあいさつ。受付にいくと女将さんがばたばたとしてる。すると、今日予約じゃなくて別の日でしたよね、というが口頭で約束しただけなので不安になってしまう。そして予約の真実は興味がない、今日が無理ならそれでよい。女将さんはばたばたしている、女縄市にでかける用事があるとのこと。今日きっと大丈夫だから、といって出かけてしまう。あの、ゴルゴ先生はいいと悪いとも言ってなかったと思いますが、本当に大丈夫なんでしょうか。不安になった。それにあまり遅くなるようなら仕事に遅刻してしまうし、なしならなしが良かったんですが。でも、まあ、遅刻してもいいか。無遅刻無欠席無早退みたいない記録はさっさとなくなればいい。遅刻したところで誰もなんともおもってない。目標設定のふりかえりで、業務規則を遵守しましたか、という項目に満点をつけることにどんな意味があるというのだ。ポニーさんと戯れながら待つ。顔の中心を避けて、必ずどちらかの側面で馬に見えるように立ち振る舞う。お互いきちんと注意しながら距離を詰めることができる。オレにとっては人間でも正対せずに視線を自然にそらしやすい位置にポジションをとることにしよう。五分と待たずにゴルゴ先生がでてくる。朝からの先生のまなざしはきつい。眼光か強すぎる。目と自意識が灼けそうになる。
キモサベを厩舎から洗い場につれていく。今日のキモサベは泥がおおい。雨の日が多かったのでしかたないか。今日は乗馬後のお手入れの講習。キモサベの無口頭絡は小花柄でかわいい。かわいい男の娘。蹄を鉄扉で洗う。お手本を前足でみせてもらう。残りの三本をやる。ゴルゴ先生は座ってタバコをくゆらせながらオレの作業をじっとみまもる。キモサベに踏まれないように自分の足の位置を注意する、馬の反応をみて加減する、などの指導をうけるが、ゴルゴ先生の無言の視線がすごすぎて動悸がおさまらない。見つめられるだけで暗殺されそうだ。ぜいぜい。馬は手をあてるだけで足をあげてくれるのであんまりぐいぐいしなくてもよし、とのアドバイスもうける。どうしてもダメなときだけ肩でおしてあげるとよい。なるほど、宿題しろといわれるとやりたくなくなるしね、そろそろ宿題しようか、ぐらいの提案の方が落ち着いた関係性を築ける。次は足を水で洗う。これがとても大事だそうだ。球節、人間で言うところの足首らへんは汚れがたまりやすく、そこが汚れたままになると炎症を起こすことがあり最悪に場合歩行困難になるらしい。それは恐ろしい、しっかり学ばねば。毛の奥までしっかり洗う、窪みがあるのでしっかり洗う、そしてきっちりふきとってあげる。これがやってみるとなかなか難しい。毛は密集していてけっこう固い。指をたててほりほりしていくとやっと毛元までたどりつく。そのなかで足踏まれ注意、鼻面攻撃注意、後ろ足注意、さらにはゴルゴ先生のミスを見逃さないプロの視線とオレの自閉。どんどん自閉したくなるよ。洗う球節の部分の形状が複雑なので油断すると洗い残しがでる。緊張でぼんやりしてしまったが、四分割しながらやるとか、シンプルに作業したほうがよさそうだ。分割統治法は作業効率の基本となる。最後の四本目の後ろ足。屈んでがっつり洗ってあげるのだが、キモサベの尻尾攻撃がすごい。尻尾をお手入れしてあげたので毛先がそろって威力が増している。痛い、キモサベ、痛いよ、やめて。そういうプレイかな。キモサベはかわいいです。お尻のお肉がしゅっとしててセクシー。憧れる。ちがうちがう。そういうことではなくて、尻尾攻撃すごい。温度、湿度がハエたちにはちょうどよいらしく量がすごいことすごいこと。人間には臭いは感じないし、厩舎なんていつきてもお姉さんが猫車で何往復もしてて何の匂いもしないから。田舎の豚舎みたいものとはまったく違う。でもハエは馬だってわかるのだから、比較的シンプルな昆虫がそういう能力をもっていることに興味もある。そんなことをおもっていると尻尾でメガネを絡めとられてぎゃーメガネがふっとんでいってしまう。やめろよおお。見かねたゴルゴ先生がアースジェットプロをとりあげるとキモサベに噴射。一網打尽。その発想はなかった。基本はハーブ水で追い払うみたいだが、最後はアースジェットプロが登場する。まさに科学万能の時代ですね。お手入れの講習がおわるとキモサベは眠そうな顔をしている。まあ嫌じゃなかったならよし。最後は厩舎にしまう。なんだー今日はのらないんかーいっていうキモサベの抗議はない。いやあ、キモサベのお手入れ面白かった。やはり相互作用である。マニュアルではなくオレの所作とその相手の(ゴルゴ先生を含めた)反応、それがオレの次の所作を分岐させる、すべてが取り返しのつかない一回性の繰り返し。失敗しても萎縮するまでには怒られないし、キモサベもベテランらしくよっぽどでない限りオレを見守っていてくれる。うーん、なんともいえないんだが、感慨深い。ゴルゴ先生に別れのあいさつをして帰る。厩舎のキモサベがオレをみながらおやつがないことをがっかりしている、ように見える。今日は乗ってないしお手入れしたんだからいいじゃないか。オレは自転車にまたがる。あやも自転車の荷台に座り、ぼそっと耳元でささやく。「ねえ、37.8℃なんだって。馬の平均体温。摂氏37.8℃」だからどうした、お前は冷血動物だろうが。

仕事を開始する。デイリースタンドアップはぼんやりした感じ、目的がない。個別のタスクをただ報告するデイリーは失敗の兆候だ。誰も困っている人はいない。つまりこのメンバーたちに困っていると伝える動機がなく、あるいは心理的安全性もない。デイリーやめたらいいのに。ムダな時間。さらに笹野マネージャーはオレのことをデバフ状態の使えない戦力とぐらいしか思っていない。まあ、オレが先に引き金をひいたのだから文句をいうオレが間違っている。オレがやりたいようにやればしいし、困っているなら助けてくれそうな人に自分で声をかけろ、とのことだ。ここになって心がすさんであまりにも本音で話しすぎた自分の失敗に気づく。自業自得だがオレのこの会社でのキャリア終了のお知らせのラッパが聞こえる。どうでもいい仕事に一日の仕事を費やす。チャットに大量のメッセージを上げてあーだーこーだと困りましたと自分で助けを求めにいったが解決しない。優しいエンジニアがあーじゃない、こーじゃないと応答してくれるが、それでもだめ。しかし優しいエンジニアっていつもきまっていて、そしてその人たちは評価されていたりされていなかったりする。不確定なものにたいして仮説、試論を展開できて、それが間違っていても発言できる人をオレはすごいと思う。結局問題は解決できなかったがサポートしてくれたエンジニアにお礼のメッセージをなげて今日の作業を終了する。

頭を切り替える練習。OSをシャットダウンし、モバイルで Slack からログアウトする。その状態でステータスチェックする。頭の中は仕事の問題解決方法を探るためにぐるぐるしている。どうでも良い問題だ。オレなんて仕事の役にたたない。解決したからどうだ? ふられたタスクをこなせるからどうだ? チームで働けないならオレ的には成長はない。ただしお給料分の仕事をしないといけない。ただそれだけ。義理人情もタダではない。スイッチが切れない。頭でも壁に打ち付けて制御可能な感覚情報で思考を止められるといいのだけど、それをやると病気にカテゴライズされまたもとの休職にもどってしまう。まあ自分を殴るのがよかろう。オレは自転車でお出かけする。女縄市まで冷凍食品の買い出しに行こう。感覚が鈍い、視覚から入る色が淡く鈍い、聞こえない、風を感じない、心拍を感じない。ちょっと深刻である。感覚をおいてけぼりにした身体にやどる理性は悟性に精査を依頼し悟性は理性に問題なしの応答を返す。それの無限ループ。思考のショートとはこういう事態なのかもしれない。感覚値を強制的にあげて感覚と悟性のなかの狭窄を強制的に押し流す。具体的には坂でペダルを踏みまくればいい。十四歳末期には心拍一九〇はいけない。でも死ぬよりもひどいことはある。感覚と悟性の梗塞。ペダルを踏んだら良い。自律的に汗がでる、心臓が鼓動する、呼吸が荒くなる、呼吸音を耳が感知する、汗が流れ皮膚表面の感覚を起動する、ペダルを踏むのをやめよ、と命令する声がする。薄い感覚を総動員するとその越えに反抗できる。オレはペダルを踏み続ける。

家にかえるがやはり感覚は薄い。しかし仕事は追い払うことができた。一勝一敗の五分というところか。風呂に入り、冷やし中華をたべる。野菜を切らしている。ささみ肉、ゆで卵のタンパク質添え冷やし中華。運動したあとには、それはそれでやり。ささみ肉をルクエにつっこんでレンジで加熱する食べ方が超らくちん。でもやっぱり冷やし中華は野菜欲しいです。
食後はお酒を飲みながら執筆作業。オレはいい加減、日記に二時間も時間をとっている場合ではない。書くのを減らすか辞めるか、他の時間を見直すか。

薬を飲んで寝る。